「コミック乱ツインズ」2022年1月号(その一)
もうそんな時期か!? と思ってしまいますが、号数の上では「コミック乱ツインズ」はもう1月号。創刊19周年記念号(プレゼント企画は「オリジナルお薬手帳」……)は、『軍鶏侍』の表紙、『暁の犬』が巻頭カラーであります。今回も印象に残った作品を一つずつ紹介いたします。
『暁の犬』(高瀬理恵&鳥羽亮)
敵味方数々の犠牲者を出し、いよいよ決戦が迫ることを感じさせる本作。味方の側に相次いで二胴による犠牲者が出たのに対し、はたして自分の剣で二胴を破ることができるのかと、思いつめる佐内ですが――そんな煮詰まった状態の佐内を追い詰めるように、思いも寄らぬ強敵が襲撃を仕掛けてくるではありませんか。
それは満枝の父親・藤崎甚右衛門――いや、別に甚右衛門が実は敵側の剣の使い手というわけではなく(たぶん……)、娘が結婚前提でお付き合いしている(と仲立ちしたおばさんが言い張っている)若者と会いたいと、いきなり一席セッティングされてしまったのであります。
確かに、こう、関係ないとはもう言えなくなってしまったわけですが、しかし命がけの戦いに臨もうと思い詰めまくっている時にこれは困る。いや、平和な現代人でも、いきなりこれは困ります。
しかも会ってみれば甚右衛門さんは、佐内とはまったく別の世界に生きていることが一目瞭然の好人物。普段獣だ犬だ人斬りだと据わった目をしている佐内には、ある意味眩しすぎる相手であります。
ただでさえ明日をも知れぬ生き方をしている自分に、降って湧いたように形となって現れた未来。ここで自分の父が何を思って生きていたのか、思わず考えてしまう佐内が実にリアルですが――命を捨てても相討ちがやっとの相手との対決を前に、心を乱されまくる佐内は、無事に未来を迎えることができるのか? むしろ彼の場合は、これくらい未来を背負ったほうが剣が安定するのではという気がしますが――さて。
『軍鶏侍』(山本康人&野口卓)
冒頭、真剣を手に対峙する二人の剣士――一人は力強く矢継ぎ早に剣を振るう若者、もう一人は巧みに体をさばき、的確な一撃を放つ中年。若侍の猛攻を巧みにいなした中年侍は不敵な笑みを浮かべ……
と思いきや、これが軍鶏の擬人化だった! という意表を突いた始まりの今回。そもそも軍鶏侍の名前の由来(の一つ)である源太夫の軍鶏飼いですが、若軍鶏に自信も技も同時につけさせたい、それもできるだけ早く――という彼の悩みに、下男の権助が提案したのが「咬ませ」であります。
つまりは咬ませ犬――闘犬の世界で老練な咬ませと若犬を戦わせ、若犬に経験を積ませるという方法であります。
その提案を採用した源太夫が咬ませに選んだのは、既に盛りを過ぎたものの、全盛期は最強を歌われた名鶏・義経。咬ませにされるために二年間戦いから遠ざけられた義経は、ついに若鶏との対決を迎えるのですが……
軍鶏侍ならぬ軍鶏が侍の今回ですが、その主役ともいうべきなのが、人間でいえば源太夫と同年代の義経。しかし今回描かれるのは、その義経が源太夫の思いつきによって生き方を変えられ翻弄される姿であります。
もちろんそれは源太夫の若軍鶏を育成するという熱意の現れであることは間違いありません。しかし同時にそれは――咬ませとしての義経の戦いを目にした時の軍太夫のリアクションも含めて――ひどく傲慢で残酷なものでもあると感じられます。
権助の言葉によってその誤りを悟った源太夫ですが、そこには義経に「そうであったかもしれない自分」を重ねた想いもあったのではないか――そう感じます。
こういう形で『軍鶏侍』という物語を描けるのか、と感心させられた次第です。
長くなりますので次回に続きます。(全三回)
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