岩崎陽子『無頼 BURAI』第2巻 斎藤の悩み・沖田の屈託 二人の絆
斎藤一を主人公に描く伝奇色濃厚な新選組物語『無頼 BURAI』の第2巻であります。この巻ではもう一人の主人公ともいうべき沖田総司によりスポットが当たり、斎藤との関係性がクローズアップされることになります。
斎藤一を主人公に、新選組創成期から描かれる連作シリーズの本作。試衛館一派と芹沢一派の確執がいよいよ深まる中、斎藤はその間に立たされる形で、物語は展開していくことになります。
この巻の冒頭のエピソード「妖刀」で描かれるのは、そんなある日、斎藤が刀の掘り出し物を探している時に、いかにも曰くありげな刀と遭遇したことから始まる物語です。
何しろこの刀、紙縒かと思えば御札で鯉口が結わえつけられ、斬り合いの場に出くわせば唸りを発するという代物。赤鰯状態だったのを研ぎに出してみれば研ぎ師たちが次々と怪我をすることになったりと、明らかにマズい状況に、斎藤もこの刀を手放すのでした。
が、なんとその刀を芹沢が手にしてしまうという、考えうる限り最悪の状況に。当然(?)暴走して暴れまわった末に屯所を飛び出した芹沢に対し、責任を感じた斎藤は、沖田と共に後を追うことに……
という、新選組ものではありそうであまりない妖刀譚のこのエピソード、このまま芹沢退場か!? と一瞬思いましたが、もちろんそんなことはなく、ここでは、斎藤と沖田の心の繋がりの一端が描かれることになります。
本作では何かと苦労性ですぐ悩む斎藤に対して、飄々としてとらえどころのない沖田。そんなちょっと対照的な二人ですが、妖刀を前にした二人の立ち回りは、まるで長きに渡りコンビを組んできた者たちのよう。そしてそのコンビネーションを生んだものが何であったか――それがなかなかグッとくるのです。
そして続く「隠れ鬼」では、さらに二人の関係性が深まることとなります。沖田が非番の時には近所の子供たちとよく遊んでいた、というのは有名な逸話ですが、このエピソードでは何とも微笑ましいことに、そこに斎藤が巻き込まれることになります。
そしてその中で、斎藤は沖田が子供時代に隠れ鬼が怖かったと聞かされるのですが……
と、物語的には遊んでいた子供の一人が神隠しに遭い、その背後に思わぬ陰謀が――という展開になるのですが、やはり印象に残るのは、隠れ鬼の記憶の中で描かれる、飄々とした沖田の中の屈託でしょう。
その陰を感じさせながらも、しかしそれでも彼が前に進み続けていることを、斎藤との関係性の中で感じさせる結末が印象に残るのです。(そしてここでの台詞がこの先思わぬ形で帰されるのですが、それはまた先で……)
一方、この巻の3話目の「覚」は、サブタイトルのとおり人の心を読む力を持つ芸妓・環が登場。ある理由から宴席でどんより曇っていた斎藤は、初対面の環からまさにその理由を言い当てられ、彼女の能力を知ることになるのでした。
ところがその晩、任務に当たっていた新米隊士が待ち伏せを受けて斬られたことから、斎藤は彼女を疑うことになるのですが……
家を離れ、ついには京に向かうことになったことに、フィクションでは様々な理由がつけられている斎藤ですが、ここで描かれる本作のそれはちょっと意外なような、この斎藤であれば――と納得できるようなもの。
その秘密が本作ならではの形で描かれるエピソードですが、その中で「覚」自身の想いを慮ることが出来る斎藤は、やはり好人物というべきでしょう。
(そしてオチ要員にされるのあの人……)
そしてラストの「番外編 鳥風」は、番外編と銘打たれるだけあって、主人公の斎藤が京で合流する前――試衛館一派と芹沢一派の初対面を描く物語であります。
それぞれに夢に胸を膨らませて浪士組に参加した試衛館組の中で、ただ一人、夢を持たずにいた沖田。
彼はそんな自分とは対照的に大きな夢を追いかけているはずの土方の「夢も不満もないなんざ結構なことじゃねえか」という言葉に違和感を感じるのですが――そこに秘められた意味を、やがて悟ることになるのです。
この時期の物語らしく(?)クライマックスは本庄宿での「野営」事件なのですが、そこでの土方と沖田(そして芹沢も)、それぞれの姿が実に「らしい」このエピソード。ラストの土方の殺し文句も実にグッとくるもので、斎藤だけでなく沖田、そして土方もあってこその本作だと感じさせられるのです。
そして次巻以降は、また物語の方向性が大きく変わってくるのですが――その紹介は、またいずれ。
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