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2022.02.02

横山光輝「伊賀の影丸 外伝」「伊賀の影丸 百舌の藤蔵の巻」 その後の影丸、帰ってきた影丸

 以前、不定期に『伊賀の影丸』全章の紹介を行いましたが、ふと気付いたのは、まだ外伝短編の紹介を行っていなかったこと。全三編(正確には四編)ある外伝は、現在はいずれも『原作愛蔵版 伊賀の影丸』の第9巻に収録されていますが、今回はそのうち二編を紹介しましょう。

「伊賀の影丸 外伝」
 ある日隅田川に浮かんだ男の死体――猛毒の鉤がついた縄を手にしたその男は、秋葉藩二十万石に潜入していた公儀隠密・蜘蛛の十郎太でした。
 十郎太の最後のメッセージから、藩主・忠親が既に死んでいるという疑いを持ち、影丸と甚吾の二人を送り出す服部半蔵。しかし城に潜入した影丸は、忠親の健在な姿を見るのでした。

 しかし数日後、家老が事故で亡くなり、それを調べていた甚吾も死体で発見されることになります。影丸は城で見たある事をきっかけに、一連の事件の真相を悟ることに……

 本編終了後から四年後の1970年に「別冊少年マガジン」誌の「その後のまんがスター」特集の一つ(ちなみに他の作品は『鉄腕アトム』と『ゲゲゲの鬼太郎』という豪華メンバー)として掲載された本作は、「その後の」――という点を意識してか、影丸が少年ではなく、青年として描かれている(ように見える)のが、まず印象に残ります。

 その内容の方は、ある意味「普段の」公儀隠密の任務を描いた物語と言うべきでしょうか――本編でも幾度かありましたが、とある藩での変事を察知して潜入した影丸が、強敵と対決するというパターンであります。
 とはいえ、短編ゆえにトーナメントバトルを繰り広げるわけにもいかず、むしろミステリタッチの物語となっているのが、本作の最大の特徴でしょう。

 その真相自体はわかりやすくはあるのですが、しかし白眉は敵の正体と動機でしょう。それ自体は忍者ものでは時折見かけるものなのですが――しかし任務のために、完全に私情と命を捨てて戦う忍者たちが登場してきた『伊賀の影丸』で描くからこそのインパクトがあります。
 そしてそれと対峙する影丸のビジュアルも、少年ではなく、ある程度世の中に揉まれた青年であるからこその味わいが生まれるわけで、この辺りはやはり名手の筆と感じます。


「伊賀の影丸 百舌の藤蔵の巻」
 岩倉藩に潜入し、無残な死体となって発見された公儀隠密たち。普通の人間には登れないような高い木の上に、百舌の早贄のように突き刺された姿で見つかったその死体は、伝説の忍者・百舌の藤蔵の仕業であることを示すものでした。
 影丸がまだ小さい頃から名前を噂され、まるで自分の仕業を誇示するような殺しを行いながらも、姿なき伝説の忍びとして恐れられてきた藤蔵。ここ十年、岩倉藩を守ってきた藤蔵を倒すため、半蔵は影丸と彦造・助五郎を派遣するのでした。

 しかし年齢すらわからない謎の敵に手を焼く中、次々と倒されていく二人の仲間。潜入先で知り合った物乞いの子供のもとに身を寄せた影丸が気づいた、藤蔵の正体とは……

 こちらは1977年に「プレイコミック」誌の別冊「帰ってきたヒーロー特集号」に掲載された一編(こちらもまた掲載メンバーが豪華すぎて驚きます)。
 執筆時期の関係もあるかとは思いますが、影丸は大人びてはいるものの、少年の面影を残す姿で描かれ、内容的にもグッとシンプルに、謎の忍者の正体暴きと対決がメインとなっています。

 正直なところ、この藤蔵の正体にはほとんどの読者がすぐに気付くかとは思いますが、しかし正体不明でありながら、自己顕示欲を感じさせるという矛盾した行動を見せる藤蔵の心理分析は、なるほどと感じさせられます。
 そしてそんな相手をきっちり罠にはめた上で叩き斬る、影丸の用意周到さもまた、らしいといえばらしいというか、忍びの正道を行くものというべきでしょうか。


 残る外伝「影丸と胡蝶」と「その後の伊賀の影丸」は、次回紹介いたします。


「伊賀の影丸 外伝」「伊賀の影丸 百舌の藤蔵の巻」(横山光輝 講談社KCデラックス『原作愛蔵版 伊賀の影丸』第9巻ほか所収) Amazon

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