士貴智志『爆宴』第5巻 決戦 梁山泊の力、「宋江」という存在の意味
異世界転生水滸伝『爆宴』も、いよいよこの第5巻で完結。梁山泊を奪還するために突入した晶・史進・公孫勝の前に現れたのは、皇帝と高キュウその人――宿敵との対峙の末に晶が知る世界再生の真実とは、梁山泊と「宋江」が持つ力の正体とは……。いま、全てを取り戻すための戦いに決着の時が訪れます。
ある日突然に失われた自分の世界を取り戻すため、「宋江」として、水滸伝の魔星たちとともに戦ってきた女子高生・晶。公孫勝の導きで梁山泊に向かう晶たちですが、そこは既に官軍に占領された後でした。
そこで晁蓋・楊志・転生した林冲たちと出会い、仲間となった晶は梁山泊奪還のために攻撃を開始しますが、そこに現れた呼延灼の連環馬部隊の激しい攻撃に苦しめられることになります。
呼延灼の相手を仲間たちに任せ、相手が打って出た隙を突いて梁山泊に突入する宋江・史進・公孫勝の三人。しかし梁山泊の内部は無人――そしていかにも晶たちを誘うように仕掛けられた転送装置に、三人は敢えて踏み込むことを選びます。
その先で彼女を待ち受けていたのは、神蟲を放って様々な世界を滅ぼしてきた徽宗皇帝と高キュウ。迷宮都市に次いで再び対峙した宋江に対し、高キュウは自分たちが持つ、ある力の存在を語るのでした。
そしてそのエネルギーとなるものこそは、徽宗皇帝に憑いた太古の存在・盤古。その力で全てを食い尽くし、世界をリセットせんとする盤古に挑む史進ですが、流石に相手が悪く圧倒されるばかりであります。
そして晶は、世界を再生するために高キュウの誘いにあえて乗るのですが……
というわけで、いきなり高キュウとの直接対決に突入することになった晶ですが、しかしその模様は、予想していたものとは大きく異なることになります。この巻の多くの部分を割いて描かれるそれは、「宋江」と高キュウ、そして梁山泊が持つ力の正体の描写――そしてそれを巡る晶と高キュウの対話なのですから。
その詳しい内容にまではここでは触れませんが、なるほど、既に食い尽くされ、滅ぼされた世界を取り戻すためにできることはこれしかない――というものであることは確かでしょう。
そしてそれを巡る高キュウと宋江、というより梁山泊の関係も、原典においてある意味高キュウがいなければ梁山泊は存在しなかったことを思えば、それなりに理解できるものと感じます。
正直にいえば突飛ではありますが、宋江と高キュウ、そして梁山泊と魔星たち――さらには「水滸伝」という物語の意味までも問い直そうというこの試みは、水滸伝ファンとしては大いに胸躍るものがあります。
特にクライマックスにおいて、全てを失った晶が手にしたものは――という展開は、ある意味お約束ではあるものの、それだけに大いに燃えるのです。
(燃えるといえば、その前に史進が見せた覚醒も、無茶といえば無茶なのですが、本作の設定を踏まえたもので、大いに盛り上がるのです)
もっとも、全体的に駆け足に見えるのは否めないところで――特にこのような形で宋江や魔星、梁山泊という構造を語るのであれば、その中において晁蓋は何者なのか、という点に触れられなかったのは、やはり残念というほかありません。
そしてもう一点、やはり他の魔星たちの姿を、モブとしてでもいいから、シルエットだけでなしに見たかった――というのも、水滸伝ファンとしての掛け値なしの印象ではあります。
というわけで、勿体無い点は色々とあるものの、しかし本作が、「水滸伝」という物語に、意欲的な角度から挑んでみせた作品であることは間違いありません。
結末の後味もよく、まずは大団円であります。
『爆宴』第5巻(士貴智志&イダタツヒコ 講談社シリウスコミックス) Amazon
関連記事
士貴智志『爆宴』第1巻・第2巻 異世界の梁山泊! 少女は「宋江」になる!?
士貴智志『爆宴』第3巻 物語の真の始まり 復活! 梁山泊百八の魔星
士貴智志『爆宴』第4巻 梁山泊への道! 「水滸伝」の自分を超えていけ!
|
|
Tweet |
|
| 固定リンク
