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2022.02.19

さいとうちほ『輝夜伝』第9巻 すれ違う想い 月詠の想い・男たちの想い

 天女への執心から暴走した治天の君に捕らえられ、我が物になれと迫られる月詠。これに対して竹速・大神・凄王の三人は、彼女を救い出すべく策を練ります。しかし治天から救い出したとしても、天女の血を引く月詠の運命は変わりません。それを避けるために彼女が選ぶ道は……

 かつて自分が愛した天女の像を造らせるため、そのモデルとして招いた月詠に、我が物になれと迫る治天。当然拒む月詠ですが、治天は天女の力を阻むという竹の結界(!)に彼女を捕らえ、何とか首を縦に振らせようとするのでした。

 月詠のこの窮状を知った、彼女にそれぞれ想いを寄せる(た)三人の男――竹速(梟)・大神・凄王は、呉越同舟手を組んで、救出に動き出すことになります。なるほど、単純な戦闘力という点では本作では最強の三人ですが――しかしまさか治天の屋敷に正面から殴り込むわけにもいきません。
 一方、月詠は天女らしく(?)求婚者たる治天に、自分の母を連れてくることという条件を出します。そしてそれと時同じくして竹速たち三人が治天の屋敷に参上、竹速が月詠の母のことを治天に語る間に、大神と凄王が月詠を奪還することに……

 しかし、救われたら救われたで、救ったら救ったで、また悩み多い月詠と男たち。早々に双子仏師の妹に乗り換えた凄王はともかく、月詠は竹速を愛し、大神は月詠を愛しという関係は全く変わりません。それでは竹速は――?
 そして何よりも問題(?)なのは、ついに判明した天女が月に帰らなくて済むという方法であります。簡単にいえば、地上で子を成せばよいのですが――ここにこの男女関係が絡めば、ややこしいことになるのは自明の理でしょう。

 もっともこの場合、最優先されるべきは月詠の想いであることは言うまでもありません。そしてついにひしと抱き合う月詠と竹速ですが――ああ、運命はまだまだ二人に、そして大神に、過酷で皮肉な試練を用意しているようであります。
(しかし確かに月詠からしてみれば竹速の言い分はあまりにも無情に聞こえるであろうことは確かですが――男性としては、竹速に大いに同情してしまいます)


 しかし、月詠と治天の約束は――月詠の母を探し出すという約束は、いまだ生き続けています。そしてその約束を果たすため、治天はこともあろうに竹速と大神に(あと火麻呂に)その母探しを命じるのでした。
 とはいえ、これまでの物語でその痕跡がほとんど全く残されていなかった月詠の母がすぐに見つかるとも思えません。唯一残された手がかりは、月詠の母が持っていたという数珠ですが、しかしそれも作らせた者と作った者がわかるのみ――しかもどちらも既にこの世の者ではないのです。

 そんな中、全く意外なところから、月詠の母の手がかりが――いやそれどころか、月詠の母自身の言葉が示されることになります。宿下がりしたかぐやに従い、讃岐の竹取の翁の館を訪れた月詠。そこで彼女とかぐやは不思議な体験をすることになったのです。
 そしてそれを知った竹速と大神も讃岐に向かうのですが……


 いやはや、この状況にかぐやの○○も加わり、これまで以上に先が読めない本作の展開。天女とははたして何者なのか、そしてかぐやと月詠、二人の天女はこの宿命から本当に逃れることができるのか。そして男たちの想いの行方は……
 螺旋階段を上っているのか下っているのか、大きく動いていないようでいて、確実に物語は深まっている――そんな印象であります。


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