岩崎陽子『無頼 BURAI』第3巻・第4巻 斎藤と沖田、すれ違う想い
斎藤一を主人公に、伝奇テイスト濃厚に新選組の姿を描く本作もいよいよ中盤――なのですが、ここから物語はそうした要素をほとんど排した、歴史ものとしての色彩を強めていくことになります。京の商家を次々と襲う凶賊に挑む新選組ですが、その中でふとしたことから斎藤と沖田はぶつかり合うことに……
次々と商家を襲っては中の人間を皆殺しにし、天誅の文字を残す凶賊――その奇妙に冷静さを感じさせるやり口に違和感を感じる斎藤と沖田。出動が増えるのに対し、新選組には多くの新入隊士が加わったものの、まだまだ実戦経験が浅い彼らは使いものになりません。
そんな中、斎藤はかつて江戸で道場の後継者を巡って真剣勝負を繰り広げた男・相河と再会しますが、後日再び賊と対峙した時、その中に相河の姿を認めることになります。
一方、屯所で沖田が土方に「斎藤さんは土方さんの必ず役に立ちます」と告げているのを聞いてしまった斎藤。自分が道具扱いされていると感じてしまった斎藤は、沖田への不信感を募らせ、二人の関係はどんどん悪化していくことになります。
そして町中での探索を通じて、賊が次に狙うのが呉服の大店・三浦屋であることを掴んで来た新入隊士の山崎。三浦屋は新入隊士・西野の許嫁の家でもありましたが、芹沢は山崎のことを信用せず、新選組に出動命令を出そうとしません。そんな状況の中で、斎藤や沖田の行動は……
と、この第3巻・第4巻の中心となるのは、全五話構成(序章ともいうべき「闇風」を入れれば六話)のエピソード「風戯(かぜそばえ)」。これまでが一話完結であったことを考えればほぼ長編ともいうべき内容であります。
それだけに
・斎藤に遺恨を持つ剣士が加わった謎の凶賊との対決
・斎藤と沖田のすれ違いを通じた二人のキャラ描写
・新入隊士たちの存在を通じた、武士とは、新選組とはという問いかけ
と、様々な要素が盛り込まれ、さらにそこに死番制度や探索方の設置といった、新選組ではお馴染みの要素にも繋がっていくのですから、ストーリー構成の妙に感心させられます。
(その一方で、超自然的要素は、死番に怯えて脱走・切腹させられた新入隊員の幽霊が登場するくらいなのですが、それはさておき)
しかしこうした物語の中心となるのは、何といっても斎藤と沖田の関係性にあることは間違いありません。
お互いに性格にちょっと難ありの二人ですが、特に誤解されやすい態度の斎藤は、これまでどこに行っても周囲に馴染めなかった男。そんな彼が、これまでの戦いを通じ心を開きつつあったのが、沖田をはじめとする試衛館の面々だったのですが――沖田の些細な言葉が元で一気に関係が悪化することになります。
その一方で沖田がそんな言葉を使ってしまった理由も、明確には語られないものの、これまでの描写を思えば十分に頷けるところがあり――と、このひと波乱が、二人のキャラクターの掘り下げにそのまま繋がっていくのが巧みなところであります。
そしてそこから更に広がり、試衛館一派とは何なのか、というところから(ここでタイトルに絡めてくる見事さ)、全ての要素が一気に集約されるクライマックスまで――間違いなくこのエピソードは、本作の山場の一つといって良いかと思います。
さて、第4巻の後半には「陽炎」「遠雷」「乱れ草」が収録されていますが、こちらも実質的には続きものであります。
大坂での力士との乱闘事件から壬生相撲興行、芹沢の大和屋砲撃、八月十八日の政変――と史実での事件が続いていく中で、斎藤と沖田が出会った若侍・高本貞司郎。
何やら新選組を窺う様子の高本と関わり合うことになった二人ですが――ここで高本という外部の目を加えることで、この時機の新選組を客観的に見ようとしているのも面白い試みというべきでしょう。
そしてその陰で土方と芹沢一派の確執はどんどん深まっていき、ついにこの巻のラストでは――というところで、次巻はいよいよ最終巻であります。
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