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2022.03.03

うちはら香乃『異界譚里見八犬伝 七章 情熱の四犬士』 犬士たち、それぞれの戦う理由!

 今月から八章の連載がスタートした朝日小学生新聞のフルカラー漫画版八犬伝、その七章は「情熱の四犬士」のタイトルに相応しく、四犬士の揃い踏みでの大活躍。処刑場に引き出された荘助を救うため、信乃・現八・小文吾が駆けつけます。そしてその戦いの先に待つものとは……

 玉梓によって怪物化したひがみ宮六を倒したものの、その弟・社平の讒言により獄に繋がれ、激しい拷問を受ける荘助。大塚村の惨劇と荘助の受難を知った信乃たち三犬士は、密かに(?)城下に潜入するものの、そこで社平そして新たな領主である丁田町之進の邪悪さに触れ、愕然とすることになります。

 密かに身に着けた秘術によって辛うじて命永らえていた荘助ですが、しかし処刑されることとなり、その命は風前の灯火。しかし処刑場に引き出される――すなわち牢から出される時こそが最大かつ最後のチャンスと、信乃たちも動き始めます。
 かくて処刑場に潜入した三犬士は、荘助がまさに処刑されようとした時に立ち上がり……


 と、八犬伝前半の見せ場の一つである刑場破りがメインとなるこの七章。冷静に考えれば、原典でも比較的珍しい犬士たちが一堂に会しての大立ち回りのくだりということもあり、この章は大いに盛り上がります。
 まず先陣を切った現八が官の横暴に対して激しい怒りを燃やせば(まさに自分もそれに異を唱えて獄に繋がれただけに説得力十分)、信乃は争いを避けてきた父母の想いを理解しつつも敢えて戦う道を選び、そして小文吾は彼らとの友情のために静かに燃え――と、犬士たちがそれぞれの理由を胸に、戦いに身を投じることになります。

 しかしその中でも特に印象に残るのは、やはり信乃の姿でしょう。熱血少年のようでいて、他者の――悪人の心中まで慮ることのできる本作の信乃。しかしそんな彼であっても、理不尽な現実を前に、この選択が正しいかわからないまま――しかし、戦いを避けてきた父母の息子であることに誇りを持って、刀を抜く姿は、この章のハイライトといえるでしょう。

 思えば、本作においてはこれまで村を襲った獣や魔物と戦い、そして理不尽な追っ手に抗ったことはあっても、自ら望んで人間と戦ったことはなかった信乃。そんな彼にとって、悪人の配下とはいえ、自ら望んで人間に戦いを挑むというのは大きな決断ですが――これは決して理不尽な現実に屈したのではなく、自分なりの答えを求めて一歩踏み出したのだと、そう感じます。

 そしてそんな三人に救い出された荘助も、誓い新たに戦いに加わるのですが――彼の場合はちょっと想いがコワい方向に進んでいるような……(まあこれはこれで仕方ない)


 さて、ファストボールスペシャルまで飛び出した大乱戦の果てに、ついに刑場を脱出した四犬士ですが、しかしまだ町之進の追手が迫ります。そこで四犬士を父・姨雪世四郎に任せ、ただ一人後に残ったのはカニこと力二――本作においては道節配下の忍者集団・深淵衆の一員である彼です。

 なんとここから展開するのは力二無双――元々忍者ということで原典よりパワーアップしている力二ですが、ここでは多勢を相手にほとんど主人公級の大暴れを見せることになります。
 が、本作の力二は双子ではなく、年下の弟である尺八を先に行かせての単身での戦い。さらにそこに玉梓、そしてその配下と思しき少女(もしかして○○?)までもが登場し、絶望的な状況に……

 はたして命という名の盾となった力二の、そして荒芽山に向かった四犬士たちの運命は――次章も激動の予感です。


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