「コミック乱ツインズ」2022年4月号(その一)
「コミック乱ツインズ」4月号は、驚愕の新連載『仕掛人めし噺 藤枝梅安歳食記』が表紙&巻頭カラー。そして『おんな座頭けもの道』『儘に慶喜』『徒花』と特別読切が一挙三本掲載と、豪華な内容となっています。今回も、印象に残った作品を一つずつ挙げていきたいと思います。
『仕掛人めし噺 藤枝梅安歳食記』(武村勇治&池波正太郎(原案))
というわけで、数ヶ月前に完結した武村版『仕掛人 藤枝梅安』がまさかの復活(?)。一見食と関係のないような漫画のグルメ版スピンオフというのは、以前から密かにトレンドになっているような気がしますが、まさか梅安でそれをやるとは――と最初は驚きましたが、冷静に考えれば梅安(というか池波作品)は食と関係大あり。『梅安料理ごよみ』といった書籍も発売されているくらいですから、むしろあって当然なのかもしれません。
さてその第一回で描かれるのは、梅安ではお馴染みの料亭井筒の料理。井筒の主人の病を治した例に豪勢な膳を振る舞われる梅安ですが、そこで女中になったばかりのおもんと出会い――と、わずか16ページながら本編の隙間を埋める内容となっているのが楽しいところです。
そして井筒の膳と同じくらい、冒頭の卵かけご飯が旨そうで……
『暁の犬』(高瀬理恵&鳥羽亮)
ついに二胴修行の現場を目撃し、秘剣攻略のために己の命を擲つ覚悟を固めた佐内。体を絞るために暫く粥だけでいいと、巻頭の漫画とは正反対の(?)食生活で気合いを入れるのですが――『剣は特訓する』『弟子も育てる』 「両方」やらなくちゃあならないってのが「道場主」のつらいところ ではあります。
(しかし特訓に打ち込むあまり、本当に似合わない無精髭はともかく、月代まで毛が生えだしたのはいただけません。)
と、そんな殺伐とした状況に訪ねてきた見知らぬ女性は、なんと根岸大隅のご内儀。三日前から根岸が姿を消し、益子屋に訪ねてもわからないので訪ねてきたというではありませんか。そこで根岸に馴染みの女がいたことを思い出した佐内がその店を訪ねてみれば、女の方も三日前から姿が見えないということで……
立ち位置的に絶対危ない危ないと思い続けてきた根岸大隅ですが、ついに彼にも迫った魔の手。剣の腕でいえば佐内に勝るとも劣らない、踏んだ場数ではおそらく佐内以上の彼ですが、しかし純粋に人を殺すことのみを目的とした魔剣に抗することはできるのか。
金で他者に刃という名の牙を突き立てる「犬」と、獲物を駆り立て喉笛に――いや土手っ腹に喰らいつく「狗」、強いのはどちらでしょうか?
そしてそんな「狗」のやり口が、恐ろしい事態を招きかねないことに気付いてしまった佐内は……
『おんな座頭けもの道』(伊藤黒介)
冒頭に述べたとおり特別読切三作品が掲載された今号ですが、衝撃度という点では本作が一番でしょう。現在はpixvを中心に活動を続ける作者が、「創作なんちゃって時代劇」と題して展開してきた『おんな座頭市』シリーズが、見事に時代劇画雑誌に凱旋したのですから。
年端もいかぬ少女ながら、天才的なまでの剣の腕を持つ仕込み杖の使い手・市。本作は、按摩を表の顔、人斬りを裏の顔とする彼女の人斬り行を描くシリーズであります。
そんな彼女が今回請け負ったのは、店の若い衆を斬って宿場の飯盛女を連れ出した侍の始末。相手の居場所を突き止めた市は、侍のもとを訪れるのですが……
格好良くなければ、善悪の定まった仕掛けでもない、晴らせぬ恨みを晴らすというわけでもない――そんなある意味日常の一幕のような人斬りを描く本作。そんな物語が、市と侍、そしてもう一人を通じて、静かに描き出されることになります。
決して派手ではない(しかしクライマックスの殺陣は、こう動くかと思わず感心)からこそ印象に残る本作、なんちゃってなどでは決してない、佳品というべき作品でしょう。ぜひ再登場を期待したいところであります。
(ちなみに、「女は座頭になれないんじゃ」というツッコミをしれっとごまかすのがなかなか愉快)
大変長くなりますので続きます(全三回予定)。
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