« 「コミック乱ツインズ」2022年4月号(その一) | トップページ | 「コミック乱ツインズ」2022年4月号(その三) »

2022.03.16

「コミック乱ツインズ」2022年4月号(その二)

 「コミック乱ツインズ」4月号の紹介の続きであります。

『勘定吟味役異聞』(かどたひろし&上田秀人)
 前回、柳沢吉保の息のかかった徒目付・永渕啓輔の使嗾した破落戸三人を叩きのめし、敢えてその三人を突き出すことで大事にした聡四郎。それは、これだけ権力の闇に首を突っ込みながらも聡四郎が勘定吟味役を続けられるその理由、つまり謎の支援者を洗い出すためだったのですが――しかしそれが図らずも江戸城中の話題となってしまいます。

 命令も聞かないくせに騒動を起こす聡四郎におかんむりの白石は置いておくとして、同役の勘定吟味役たちは聡四郎の剣の腕を知らなかったのか!? と今更驚かされましたが、考えてみれば彼の戦いは政の裏で繰り広げられていたわけで、それも当然なのかもしれません。もっとも聡四郎の方も、徒目付としてしれっと呼び出してきた永渕のことを、これまで幾度も死闘を繰り広げたにもかかわらず、どこかで会ったような気がする――で済ましてしまうのですから、人の目というのは当てにならないものなのでしょう。
 にしても特命を受けた主人公に上から圧力がかけられる、というのは定番の展開ですが、逆にその圧力がかからないのは何故か、という角度から物語を描いてみせるのは本作ならでは。その一方で、間部家を操って聡四郎を狙おうという紀伊国屋の企みが進行しているわけですが……

 ちなみに今回、見開き2ページを横に断ち切って聡四郎と白石の会話を描いたり、ラスト3ページ連続でこの暗闘に加わる面々の顔ぶれが描かれたりと、力の入った構図の面白さも印象に残るところです。


『儘に慶喜』(日高たてお)
 漫画版『巷説百物語』などを発表してきた作者が描くのは、徳川慶喜を中心に据えた幕末史ともいうべき物語。徳川最後の将軍である慶喜は、幕府崩壊後も生き延び、約30年ほど静岡で暮らしましたが、本作はその悠々自適に暮らす慶喜の姿から始まり、そこに至るまでの幕末の流れが語られることになります。

 山岡鉄舟の西郷隆盛会談から江戸無血開城、旧幕臣の駿府移住まで――鉄舟、勝海舟、大久保一翁、清水次郎長、渋沢栄一など慶喜と直接関わりのあった人物だけでなく、果ては石松まで飛び出す意外史という趣きで描かれる本作。しかし驚かされるのは、その中で慶喜がほとんど何もしないことでしょうか。
 考え、動くのは鉄舟や海舟など周囲の人物、慶喜はデンと構えている――といえば聞こえはいいですが、見ようによっては周囲に任せっきりという状況。確かにそれでは近藤勇も恨み言の一つもいいたくもなるでしょう。

 その一方で印象に残るのは、静岡に暮らす慶喜が、折りに触れて富士に向ける視線であります。徳川幕府の中心であったであった男が今なお日本の中心であり続ける山に向ける視線――そこには、不動の中心であることの意味と重みを知る者ならではの、そしてだからこそ自分自身を韜晦しなければならなかった者の想いが感じられるのです。

 ちなみに、リアルなタッチと漫画的なデフォルメが共存するのが作者の絵柄の印象的なところですが、それはもちろん本作でも健在。最初のコマで自転車を漕ぐ慶喜の顔を見ただけで、作者の作品とわかるのが、何とも楽しいところであります。


『ビジャの女王』(森秀樹)
 宰相ジファルの暗躍によって蒙古軍に捕らえられたものの、相棒の墨蝗の助けで脱出に転じ、ビジャにまでたどり着いたブブ。しかし蒙古軍の追撃はなおも続き、蒙古兵がビジャに入り込む事態に……
 という緊迫した状況の中で展開されるのは、上半身裸で目元だけ出た仮面姿の巨漢という、インパクト絶大な謎の敵とブブの激突。フロントスープレックスやバックドロップも飛び出す超巨漢同士の激突はブブの勝利に終わり、侵入した蒙古兵もビジャ兵が撃退に向かったことで、まずは一安心です(が、実は普通に生きていた仮面の男の正体が気になります)。

 そしてビジャが一つの危機を乗り切った一方で、後半は急展開。バグダードがラジンの父フレグの手に寄って陥落、凄絶な大虐殺が行われた中で、オッド姫の運命にもかかわる事態に繋がっていくことになります。その一方、蒙古側にも思わぬ新キャラが登場、ビジャと蒙古、対峙する双方の先行きが見通せない状態に――というところで、続きます。


 もう一回続きます。


「コミック乱ツインズ」2022年4月号(リイド社) Amazon

関連記事
「コミック乱ツインズ」2022年1月号(その一)
「コミック乱ツインズ」2022年1月号(その二)
「コミック乱ツインズ」2022年1月号(その三)
「コミック乱ツインズ」2022年2月号(その一)
「コミック乱ツインズ」2022年2月号(その二)
「コミック乱ツインズ」2022年3月号(その一)
「コミック乱ツインズ」2022年3月号(その二)

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

|

« 「コミック乱ツインズ」2022年4月号(その一) | トップページ | 「コミック乱ツインズ」2022年4月号(その三) »