相田裕『勇気あるものより散れ』第2巻 生き残った武士の姿、会津武士の姿
明治初頭、数奇な運命に翻弄されてきた不死の民の少女・シノと死に損ねた会津の武士・春安の主従の戦いを描く物語の第二巻であります。不死の一族を殺す力を持つ妖刀・殺生石を手に入れたものの、その代償に倒れ伏した春安。はたして春安の運命は、そして彼らは無事に脱出することができるのか……
戊辰戦争で生き残り、死に場所を求めた末に、大久保利通暗殺の企てに加わった元会津藩士・鬼生田春安。しかしその企てを九皐シノと名乗る少女剣士に阻まれ、一度は命を失った末に、春安は彼女に蘇生させられるのでした。
実はシノは「半隠る化野民」と呼ばれる不死の一族の末裔。その眷属とされた春安は、幕府にその身を利用され尽くした末に心が壊れた母の命を絶つというシノに、協力を誓うのでした。
そして不死殺しと呼ばれる妖刀・殺生石を奪取するため、仲間たちと宮城に潜入した春安は、そこでシノの兄・隗と対決。殺生石の力で辛うじて勝利したものの、その代償で力尽きて……
と、いきなりクライマックスのような展開でヒキとなった前巻ですが、しかし春安が力尽きた場所は、彼らにとってはいわば敵地というべき場所。目的である殺生石を奪取したとしても、ここから脱出できなくては意味がありません。
しかし捨てる神あれば――というべきでしょうか、偶然出会った会津出身の陸軍幼年学校生徒・鉄馬に救われ、春安たちは元会津藩家老・山川大蔵(この時点では山川浩)のもとに身を寄せることになります。
ここで感心させられるのは山川大蔵というチョイス。なるほど、知恵者として数々の逸話を持ち、そして明治政府でも会津出身として異数の出世を遂げたこの人物であれば、主人公の後ろ盾となってもおかしくはないと感じます。
しかし、春安とシノが挑む相手は、いわば政府。二人が山川の元に潜伏していることを察知した太政官図書掛の山之内は、銀座の街中で銃撃戦も辞さない強引な攻撃で、脱出した春安たちに追撃を仕掛け……
というわけで、前半では春安たちと会津出身の人々との交流(そしてそれを通した明治の武士たちの姿)が描かれ、そして後半では春安たちと新政府との激突が描かれるこの巻。
前巻が半化野民にまつわる物語が中心となる伝奇性の強い内容であったとすれば、この巻は比較的歴史ものとしての性格が強めであると言えるかもしれません。
もちろんそれは物語がおとなしいということとイコールなどではなく、特に後半の、とんでもない武器まで飛び出してほとんど市街戦のような様相を呈する戦闘シーンは、インパクト十分といえるでしょう。
しかしそんな物語の中で気になってしまうのは、人間側のキャラクターへの感情移入のしにくさであります。
確かにこの時代に生き残ってきた武士の窮状――特に会津武士の理不尽ともいえる状況――は、知識として頭に入ってはいますが、それが作中の描写から、キャラクターの行動原理として納得できるかというと、いささか疑問があります。
特にこの巻の終盤の展開では、この行動原理がキャラクターの生死にまで関わってくるのですが、そこに感情移入できなければ、行動が極端な人間、という印象で終わってしまうので……
この巻のラストでは再び物語が伝奇サイドに大きく動き出す予感がありますが、さてその中で明治の武士たちの物語を、ここからどれだけ力強く描くことができるのか。正念場と感じます。
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