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2022.04.15

坂ノ睦『明治ココノコ』第3巻 突入、黒き楼閣 激突、黒白の狐

 明治の東京を舞台に、元九尾の狐であるビャクと、彼の「尾」たちが物の怪の成れの果てであるニゴリモノと対決する妖怪漫画の第3巻であります。浅草に出現し、次々と怪異を巻き起こす謎の漆黒の楼閣に挑むことになったビャクたち。楼閣に突入したビャクは、そこで己の尾の一本と対峙することに……

 かつて天狐によって封印され、己の八本の尾を奪われた九尾の狐。今は力の多くを失い、ビャクと名乗る少年姿となった彼は、天狐の命で、川路利良配下の特別警察隊として、ニゴリモノと対決することとなります。
 そしてビャクに協力するのは、彼のかつての「尾」たち――いまは一本一本が意思を持ち、それぞれ特技を持った狐の物の怪となった彼らとともに、ビャクは次々と事件を解決していくのでした。

 そんなある日、浅草に出現した漆黒の楼閣。いつの間に建築されたのか誰も知らず、そして誰もそこにあることに違和感を持たないという、明らかに怪しげな建物ですが――その周囲では殺人・自殺・怪死・失踪と、胡乱な事件のオンパレード。
 そしてその背後に物の怪、いやニゴリモノの存在があるとくれば、ビャクも黙ってはいられません(もっとも彼の場合、怒りの理由が少々異なるのですが……)。

 しかし天狐が見せたこの楼閣の正体は、辛うじて帝都に生き残った物の怪を引き寄せ、そしてニゴリモノに変化させてしまうという、恐るべき魔塔。そしてその塔の中心には、尾の一人であるコクがいたのです。
 かくてこの楼閣を叩き潰し、コクを連れ戻すべく、総出で出撃することになったビャクと七人の尾の面々のですが――彼らも物の怪である以上、楼閣の魔力には抗えません。そこで天狐の力を借り、時間制限ありではあるもののパワーアップしたビャクたちは楼閣に足を踏み入れるのですが……


 というわけで、前巻のラストからスタートし、一巻以上をかけて描かれるこの「黒き楼閣」編。楼閣のモデルはまず間違いなく浅草十二階こと凌雲閣かと思いますが(ただし本作は実際に造られる十数年前が舞台)、どこか薄暗いイメージもある凌雲閣を、文字通り魑魅魍魎が蠢く魔塔として描くのはなかなかユニークであります。

 その楼閣での戦いは、これまで限定的な能力に留まっていたビャクと尾たちが、ドーピングとはいえ力の一部を取り戻して、繰り広げるだけあってなかなかの盛り上がり。そしてそのクライマックスに待つのは、謎の黒幕に力を貸し、この楼閣で物の怪をニゴリモノに変えていた尾の一本・コクとビャクとの対決であります。

 これまで、他の尾がまがりなりにもビャクに力を貸していたのに対し、唯一明確に彼に反発し、尾に戻るのであればニゴリモノになる方がマシ、とまで言っていたコク。
 どう考えてもビャクとの対決は避けられない情勢でしたが、ここまで大事になるとは正直予想外でした。

 何はともあれ、そんな二人であるだけに、この対決は一種の思想対決の色彩を帯びることになります。
 物の怪が物の怪であることの誇りを重んじるビャクと、物の怪がニゴリモノになることを一種の進化と考えるコク――この両者の対峙は、(ビャクはこのような表現には怒ると思いますが)明治維新/文明開化というパラダイムシフトを前にした人間たちの精神を、ある意味象徴化したものと感じられます。

 もちろんそれはこれまでも物語の中に存在していた構図ではあります。しかしこれまで登場したニゴリモノがほとんど完全に怪物化していた一方で、コクが自分の意思というものを保っていることで、ようやくこの構図が見えやすくなったと感じます。
 もっとも、相変わらず人間たちには迷惑過ぎる理屈で、ほとんど全く共感できないというのが正直なところなのですが……
(冒頭の浅草グルメのエピソードが、コクへの切り返しに繋がる辺りは巧みなのですが)


 さて、この楼閣での戦いもいよいよ決着か、と思いきや、ラストでは物の怪とも何ともつかぬ黒幕が不気味な姿を見せ、ここからが本題という印象。この黒幕と因縁があるらしいあの人物も参戦し、この「黒き楼閣」編もいよいよクライマックスであります。
(それにしても明治12年という舞台設定がいかにも不穏過ぎる……)

 そしてラストに登場した、日本刀使いで先の戦いでも活躍したという、ちょっとマイペースの警部はやはり……?


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