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2022.07.24

さいとうちほ『VSルパン』第6巻 怪盗騎士、緑の目の令嬢のために奮闘す

 ルブランのルパンシリーズを華麗に漫画化した『VSルパン』の第六巻は、『緑の目の令嬢』の解決編。男たちの欲望に晒される薄幸の美少女・オーレリーをルパンは守り切ることができるのか。そしてオーレリーの記憶に隠された秘宝の正体とは? ルパンの騎士道精神溢れる活躍が繰り広げられます。

 パリの街角で偶然出会い、心惹かれた二人の美女を追いかけて夜行列車に乗り込んだルパン。しかしその一人は列車内で殺され、もう一人の美女、オーレリーがその犯人の嫌疑をかけられることになります。
 オーレリーを追う内務省の国際捜査部警視・マレスカルの行く手を阻み、彼女の逃亡を助けたルパン。しかし彼女に強く心惹かれたルパンは、その後を追うことになるのでした。

 マレスカルだけでなく、彼女の義父で司法局長のブレジャック、オーレリーを家から連れ出した若い男・ギョーム、彼女につきまとう謎の男・ジョドーと、四人の男に追われるオーレリー。
 オーレリーが山中の修道院の寄宿舎にいることを知ったルパンは、彼女の祖父が残したという莫大な遺産を狙っている男たちから、彼女を助けると誓うのですが……


 と誓った矢先にマレスカルが寄宿舎まで現れ、窮地に陥るオーレリー。前巻で役者が出揃い、物語の基本設定も語られて、この巻ではオーレリーを巡る争奪戦がいよいよ激化していくこととなります。
 色と金、二つの欲に目をギラつかせた男たちに追われる薄幸のヒロインというのは、ある意味通俗スリラーの定番ではありますが、しかし本作においては彼女を守るためにルパンが大活躍してくれるのですから、一味も二味も違う物語が展開することになります。

 もちろん、ルパンもオーレリーに恋する一人の男ではあります。しかし他の男になくてルパンにあるのは、節度とあくまでも彼女を尊重する心。そんなルパンが己の持てる能力を全て用いて、一人の少女を守り、救うために八面六臂の活躍を繰り広げる姿は、まさに怪盗紳士――いや、怪盗騎士!
 そしてそんな夢のような怪盗騎士の存在を、鮮やかに、そして魅力たっぷりに描いてみせるのは、この『VSルパン』という作品――ロマンチストとしてのルパンの姿を前面に押し出して描かれてきた作品ならではと言うべきでしょう。


 そして列車内の殺人の真相、彼女を追う男たちの正体と因縁、彼女自身も忘れ去っていた過去の記憶の正体、そしてそこから明らかになる遺産の行方――と、ルパンを探偵役に謎の数々が解き明かされ、物語はクライマックスに向けていよいよ加速。そしてその果てに姿を現す遺産とは
 ……それはあの国民的アニメ映画に引用されたこともあり、今となっては非常によく知られた内容かもしれません。しかしやはり遺産が実は――というそのインパクトは、今見ても色褪せないものがあります。

 そして迎えるルパンとオーレリー、二人の結末ですが、ここまでルパンが格好良いのであれは、そのままオーレリーの前から静かに姿を消してもよいのでは――とも一瞬思いましたが、それではまるっきり「なんとと気持ちの良い」奴になってしまう……
 という冗談はさておき、ここで示されるオーレリーの姿は、ごく普通の生身の女性でありつつも、しかし何かに縋らなければ生きられないのではなく、あくまでも自分の二本の足で立って生きようとする――そんな人間としての強さを感じさせてくれます。
(そしてそれは、これまで本作に登場したヒロインたちとは、また少し異なる姿に感じられます)

 だからこそ、ルパンもそんな彼女を正面から受け止め、そして彼女の決意を尊重したのでしょう。彼が一目見て強く惹かれた彼女の魅力の源がどこにあるか、それに気付いたからこそ……


 さて、『VSルパン』第七巻からは、『八点鐘』編に入るとのこと。八つの短編から成る原作は、ミステリとしても、ロマンスとしても評価の高い作品であるだけに、それをどのように漫画化するのか――早くも楽しみでなりません。


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