あずま京太郎『THE KING OF FIGHTERS外伝 炎の起源 真吾、タイムスリップ! 行っきまーす!』第2巻
ザ・キング・オブ・ファイターズ(KOF)シリーズの660年前の過去を描くスピンオフ漫画の第2巻にして完結編であります。タイムスリップした先で八尺瓊勾依なる男と出会い、八尺瓊、そして草薙のオロチとの戦いを目の当たりにすることとなった真吾。しかし両家の運命は思わぬ方向に向かうことに……
自分もいつか炎を出すことを夢見て、今日も今日とて草薙流古武術の特訓に明け暮れる矢吹真吾。しかしその最中、彼は不思議な空間に飲み込まれ、660年前の過去にタイムスリップしてしまうのでした。
そこで赤い炎を操るぶっきらぼうな青年・八尺瓊勾依と出会った真吾は、不審人物として捕らえられ、八尺瓊家に軟禁されることになります。
そんな中で勾依の家族、そして草薙京の先祖と出会った真吾は、両家がオロチ変化なる怪物たちと戦っていること、そして勾依が抱えた深い屈託の存在を知ることに……
と、真吾が草薙ではなく八尺瓊=八神の先祖の方に先に出会うという、いささか捻りを加えた展開で始まった本作。この第2巻では、いよいよKOFのバックグラウンドストーリーで語られた過去の悲劇の真実が紐解かれることになります。
勾依の妻・カヤから、勾依の背負った過去を聞かされた真吾。その矢先、オロチの封印の一つが解かれ、その場に倒れているのが発見された勾依は、その場に現れた帝の兵により連行されてしまうことになります。
さらに真吾とカヤが残った八尺瓊家を襲撃し、カヤを攫う二人の女八傑集(!)。さらに、囚われの勾依の前にもう一人の八傑集が現れます。そしてその語る言葉に絶望した勾依は……
660年前にオロチの力に魅せられた八尺瓊家の者がオロチの封印の一部を解き、オロチと血の契約を結んだ末に、紫の炎を操る八神家となった――第1巻でも触れましたが、これがこれまで語られてきた八神家の誕生のエピソードでした。
この巻で描かれる物語は、これを踏まえつつも、真吾の目を通じて、そこに隠されたもう一つの物語を描き出すことになります。
それは、身も蓋もない表現を使えば、後付けの設定改変なのかもしれません。過去の美化なのかもしれません。しかし実際に読んでみれば全くそう感じることがないのは、やはり物語の盛り上げ方と、勾依のキャラ描写の巧みさにあるのでしょう。
しかしそれだけでなく、本作のさらに巧みなのは、そこに真吾の成長物語が重ね合わされている点にあるといえます。
草薙の人間でないにもかかわらず、炎を出そうと懸命に努力してきた真吾――その姿は、これまで基本的に本筋とは離れた、ギャグ要素として描かれてきました。
しかし本作における真吾は、炎を出せる血を受け継いでいない、いわば炎が出せないことを宿命付けられている身でありつつも、それを乗り越えようと奮闘する、奮闘し続ける青年として描かれます。
それが八尺瓊の過去の物語と重なる時に生まれるのは、力の欲望に屈して人を捨てようとした愚者の物語ではなく、宿命に翻弄されながらもなおも人であろうと戦い続ける勇者の物語なのです。
そしてその先にある紫の炎の真実を知れば、必ずや、八神を見る目も変わると感じますし、ラストで真吾が勾依にかけた言葉に込められたものの熱さと重さ、そしてそこにある希望には、ただ涙するしかないのです。
と、実によくできた物語である本作ですが、バトル面の描写もまた、非常に巧みであります。
いわばツキノヨルオロチノチニクルフマガヒと対決する真吾の、それまでの物語を踏まえたファイト(外式・百合折りなどの技描写に納得!)、そして表と裏の本領を発揮して風を操る八傑衆に挑む草薙と八尺瓊の姿など――これを見たかった! と快哉を挙げたくなります。
一歩間違えれば色物になりかねない内容を、あらゆる面で丹念に描いてみせた本作は、特に昔からのKOFファンであればあるほど感動が大きい、スピンオフのお手本のような作品と言ってよいかと思います。
(これはまあ蛇足ですが、時代ものとして見た時に、おそらくは南北朝時代ならではの社会情勢下での、八尺瓊と草薙の不安定な立場を物語に盛り込んでいるのも、嬉しいところでした)
しかしまあ、先祖は先祖として、八神庵はやっぱり八神庵なんだなーというオチが実に……(そしてそこにさらりとあの伝説のネタを投入してくるセンスに脱帽!)
| 固定リンク
