おーはしるい『毎日が新選組』
基本コミカルに、時にシリアスに新選組を描く、「まんがタイムファミリー」誌に十年近く前に連載された四コマ漫画です。会津から間者の密命を帯び(?)、新選組のお世話係となった少女が見た新選組の真実とは……
元治元年(1864年)3月、はるばる会津から京にやってきた高坂春。会津藩からの声掛かりで新選組の身辺世話係となった彼女は、不器用で方向音痴の慌てものながら、元気で明るく頑張り屋の少女であります。
むさい男所帯の上に曲者だらけの新選組に手を焼きながらも、徐々に新選組に馴染んでいく春ですが――その正体は、実は間者!
なのですが、バレていないと思っているのは本人だけで、来た時から新選組の面々にはバレバレ。
何とか正体を隠しつつ新選組の情報を集めねばと奮闘する春と、あからさまにツッコむわけにもいかず扱いに困る新選組の面々との微妙な緊張関係の中、春は新選組の素顔を目の当たりにすることに……
という設定で展開する四コマ(基本)ギャグ漫画である本作。シリアスな作品でも新選組ものは基本的にそうですが、四コマギャグだけあってか、本作に登場する新選組はキャラの立った連中揃いであります。
豪快で器が大きいがちと単純な近藤、冷徹で厳格な(しかし新選組のことを誰より考える)土方、近藤第一でニコニコしながら剣呑なことばかり言う沖田、クールで真面目で貧乏くじを引かされやすい斎藤等々――本作で描かれるのは「お馴染みの」新選組の面々なのです。
それだけにある意味お約束的な(土方の豊玉ネタとか)内容も少なくないのですが――しかしそこに春といういわば異分子が絡むことで、物語に独特のリズムと流れが生じるのが本作の楽しいところ。陽性の春のキャラクターも相まって、基本的には肩の凝らない、明るい新選組ものであります。
が、明るいといっても新選組は新選組。本作は冒頭に述べたとおり1864年から始まりますが、ラストは会津戦争――というわけで、当然のことながらサツバツとした内部のあれこれにも、当然ながら触れられることになります。
本作は全三巻なのですが、第一巻は禁門の変あたりまで、第二巻は屯所の西本願寺移転あたりまで、第三巻は上に述べたとおり会津戦争までという構成。
ということは、新選組ものでしばしばメインとなる、新選組創成期から新選組がその名を挙げた池田屋事件までよりも、その後の出来事の方に、多く分量が割かれていることになります。
(特に物語のスタート時点で既に芹沢が死んでいるのは、長編の新選組ものでは結構珍しい印象)
そんなわけで、「派手な」エピソードばかりではない――というのは作品の設定とスタイル上当然かもしれませんが、たとえば永倉の建白書騒動に結構なページ数が割かれていたり、西本願寺の屯所ネタが少なくないのは、本作のユニークな点と感じます。
そしてもちろん、一般人視点であるからこそ、幕府の権威の坂を転がり落ちるような凋落や、隊士たちとの別れが印象に残るのですが……
ちなみに春の設定自体は架空ですが、彼女の「正体」は、実在の人物。その正体は終盤で明かされるのですが――といっても、会津出身の女性で新選組に縁があり、隊士の中では○○との絡みが結構多いとくれば、新選組ファンには正体は一目瞭然ではあるのですが、その辺りはむしろニコニコ(○○との関係ではニヤニヤ)と楽しむべきところでしょう。
(しかし何気に字が巧い、というのは面白いところを拾ったな、と思います)
もちろん、あまりに新選組をキレイに描いているという点は否めません。またその点とも密接に関わりますが、基本的に春の見ていないものは描かれないため、戦いの場面がほとんど描かれないというのも、少々もったいないところではあります。
(また彼女がある意味唯一参加した戦いである会津戦争はラスト前一話のみの扱いですが――これはまあ仕方ないでしょう)
しかし逆にいえば、戦いを直接描かないで長期に渡って新選組を描いたというのは本作ならではの特徴ですし、最後に触れるのもなんですが、もちろん四コマギャグとして楽しいのは本作の大きな魅力でしょう。
何よりも、最後に小さくとも幸せが残る――ラストで回収されるタイトルの意味が切なくも嬉しい――新選組ものというのは、ファンとしては嬉しいものです。
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