安田剛士『青のミブロ』第4巻 におの求める強さと、もう一人の少年
京出身の三人の少年を中心にしてミブロ(壬生浪士組)の姿を描く『青のミブロ』の第4巻では、とある理由から、三人がにおの「実家」である団子屋を訪ねたのをきっかけに、意外なドラマが始まることになります。店に突然現れた何者かに追われる少年、その正体は……
会津藩士を狙う辻斬り五人を見事に倒し、会津藩との距離を大きく縮めたミブロの面々。この巻では、平助を主役とした単発エピソードに続き、いよいよ意気軒昂な彼らが、ミブロ最強を決めることになります。
その方法とは――飲み比べ。かくて始まる第一回ミブロ大酒飲み大会は、ある意味じつに本作らしいテンションの高いエピソードであります。
はっきり言ってしまえば、ギャグエピソードではあるのですが、相変わらずノリのよいギャグの中で描かれるミブロたちの姿の「らしさ」には心地よさすら感じますし、その脇で幹事役で走りまくるにおと太郎(はじめは速攻で轟沈)の姿も微笑ましい。
しかし何よりも印象に残るのは、最後まで残った芹沢と土方の一騎打ち――その後の歴史から考えれば水と油の二人ですが、その二人が飲みながら交わす話題が、「ミブロの未来」とあらば見逃すわけにはいきません。
もちろん(?)酔っぱらい同士の議論ということで、(特に芹沢は)取りとめもない方向に転がっていくのですが、しかしこれまたらしいといえば実にらしい二人の言葉の端々には、不思議に含蓄があり――特にどう見てもその筋の人っぽいのに奇妙な愛嬌と器の大きさがある本作の芹沢のそれは、印象に残るのです。
さて、そんな大酒飲み大会も意外な(本当に意外な)人物が勝者となり、それをちょっと受けての次なる展開は、ミブロ揃いの羽織作り。当然ながらメンバーそれぞれでデザインには意見が分かれる中、土方が提案したのは、何とにおの婆ちゃんに頼ることでありました。
確かにファッションセンスは並々ならぬものを感じさせる人物ですが、これはおそらくにおに里帰りさせてやろうという土方の仏心。そして成り行きで同行することとなった太郎とはじめですが――そこから物語は思わぬ方向に展開していくことになります。
二人の子供が巣立ち、ただ一人で忙しく茶屋を切り盛りする婆ちゃん。そこににおをはじめ三人の少年が現れたので婆ちゃんも大喜び、さっそく三人に店を手伝わせて――と、ここでやる気のないはじめに対して、異常にイキイキとする太郎という(特にばあちゃんの家に泊まることになった時の「誰だお前!?」状態には噴きました)シチュエーションだけで実に愉快です。
しかしその中で、はじめがばあちゃんの持つ――もちろん自分たちのそれとは異なる――強さを見抜き、そしてばあちゃんがにおに自分が京に生きる意味を、裏返せばにおがミブロとなった意味を語るというくだりなど、緩急をつけた物語運びには、本作ならではのものを感じます。
しかしもちろん、イイ話だけでは終わらないのも本作であります。突然茶店にやってきた傷を負った少年と、彼を追ってきた巨大な刀を苦もなく振り回す凶漢――三人で力を合わせて凶漢を一度は追い払ったものの、凶漢とその仲間たちは茶店を包囲し、少年を狙います。
におたちの様子を見に来た土方・沖田・藤堂が合流して戦力は増えたものの、脱出は容易ではない状況。そもそも、菊千代と名乗る少年は何者で、何故追われるのか……
いやはや、あまりに意外すぎて、土方よくそのヒントだけでわかったな!? という印象ではありますが、なるほど「菊千代」がこの当時18歳であったことを思えば、こういう顔合わせはあるのか、と思わないでもありません(元々ミブロは――というのも納得)。
ただ、凶漢――直純の襲撃の動機が、攘夷などの一種思想的なものとは関係ないというのは面白いものの、言っていることが戦国時代の武士並み(いや、本当にそういうキャラではあるのですが)なのと、何よりも組織の名前がものすごく幕末っぽくないのが残念としか言いようがありません。
何はともあれ、におはこの直純から菊千代を守り抜くことができるのか――それは言い方を変えれば、におの、菊千代の想いが、直純の想いに打ち勝つことができるのか、ということに他なりません。
先が読めない展開ですが、本作ならではのドラマを見せてくれることに期待したいと想います。
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