羽田豊隆『幕末賭博バルバロイ』第1巻 将軍位を目指す大博打の始まり
『賭ケグルイ』の原作者が原作を務めることで注目された幕末ギャンブル漫画の単行本第1巻であります。ギャンブルで将軍位すらも左右される世界を舞台に、将軍を倒す大望を持つ賭博師と、侍として生きんとする女剣士が強敵に挑むことになります。
時は幕末、父の剣術道場で師範代を務める大御神甘楽は、剣の実力では道場屈指ながら、女に生まれたというだけで侍として認められないことに鬱屈したものを覚える毎日。そんな中、彼の前に奇妙な青年・秀が現れます。
賭博師を名乗る彼は甘楽の剣名を一晩で江戸中に轟かすと言い出し、わけもわからぬままに秀の勢いに飲み込まれた彼女は、江戸に剣名を轟かす旗本・山里頼隆の屋敷で開かれる賭場を訪れることになります。
そこでの丁半博打に大勝したものの、山里との勝負に敗れる秀。しかし秀は勝手に大御神家の家宝の脇差をカタに、三百両の大勝負を望んで……
冒頭、年端もいかぬ少女が賭博で負かした先代将軍の首を斬り、十四代家定として将軍位に就く、という奇怪な場面から始まる本作。これに象徴されるように、本作の幕末は、賭博が大きな意味を持つ一種の異世界として描かれます。
そんな世界で、将軍打倒を目標に掲げるのが、賭博師・秀――豊臣秀。そう、その姓からわかるように、豊臣秀吉の末裔を名乗る青年であります。
単に先祖の復仇だけではないのか、いかなる理由か牢に閉じ込められている姉を救い出すために戦う秀――そんな彼が、半ば強引に巻き込んだ甘楽とともに、将軍との御前博奕に挑むための軍資金を集めるために大勝負に挑む姿が、この巻では描かれることになります。
最初の勝負は上に述べた大旗本との丁半博打、そして次なる勝負は治外法権の黒船内のカジノで行われるペリーの孫娘・リリアンとのルーレット勝負――この時代の日本で普通に行われていたもの、行われていなかったもの、様々な賭博に、秀は挑むことになります。
一方、それに続く第三の勝負はいささか変則的というべきか――面子を潰されたリリアンの刺客として送り込まれた坂本龍馬と岡田以蔵のコンビとの対決から始まります。
こういう時の用心棒として選ばれた甘楽ですが、さすがにこの二人を相手にするのはいささか荷が重く、以蔵を相手にするのががやっと。一方、龍馬の拳銃に追い詰められた秀は、この絶体絶命の窮地に文字通り命懸けの勝負を挑んで――という展開になります。
このように、世界観自体はかなり豪快なものでありつつも、そこでいかに賭博を行うか、如何に賭博が行われるかという点について、趣向が凝らされている本作――というより、それこそが本作の最大の魅力というべきでしょうか。
その一方で、個々の勝負の内容については、ちょっとまだ食い足りないものがあるというのもまた事実。当然ながら(?)個々の勝負ではイカサマが行われ、それを如何に見破り、あるいは逆用するかがキモとなるわけですが――少なくともこの巻の段階では、簡単に言ってしまえば、知恵というより知識で勝っている、という印象があります。
そのため、勝負以前で勝敗が決している感が否めないのですが、この辺りはまだ物語は始まったばかりだから、と解するべきでしょうか。
この先、本作がギャンブルものとして華麗な逆転を見せてくれることを期待したいと思います。
(と思っていたら連載中の最新話では、ちょっと驚くような展開に……)
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