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2022.10.28

安田剛士『青のミブロ』第5巻 におと菊千代の絆 そして「彼」は何者なのか

 隊服を作るための里帰りのはずが、とんでもない大騒動が始まってしまった『青のミブロ』。思わぬ成り行きから菊千代(徳川家茂)をテロ集団から守ることになったミブロですが、におはただ一人、敵の首魁・直純をから菊千代を守ることになります。絶望的な実力差のある相手に対してにおは……

 ミブロ(壬生浪士組)で揃いの羽織を作ることになり、並々ならぬデザインセンスを持つばあちゃんに会うため、実家の団子屋に帰ったにお。同行することになった太郎とはじめともども、団子屋を手伝うことになったにおですが、そこに手傷を負った少年・菊千代が飛び込んできたことから、事態は意外な方向に展開していくことになります。

 実は菊千代の正体は、将軍家茂その人。長大な刀を操る凶漢・直純率いるテロ集団・血の立志団に追われ、供ともはぐれた家茂を二条城に返すため、三人+におたちを迎えにやってきた土方・沖田・藤堂は、思わぬ戦いを余儀なくされることになります。
 しかしにおの発案した囮作戦でうまく敵を分断できたと思いきや、一転、最後に残ったにおと菊千代の前に直純が現れるという最悪の展開に。正面から立ち向かっては絶対敵わない相手に、におは……


 というわけで、ネーミングセンスと思想はどうかと思いますが、その実力は本物の直純と対峙することとなったにお。度胸の良さと真面目さから、少しずつ腕を上げてきたにおですが、しかしミブロの幹部連に比べれば、まさしく大人と子供の差であります。
 それでも決して退くわけにはいかないのは、菊千代を守るため――彼が将軍だからではなく、将軍に相応しい広い心を持つ人間だから、におは己の全てを賭けることになります。

 相撲ではあるまいし、真剣勝負で彼の我武者羅さが通用するのか――と思ったところで飛び出す戦法は、八方破れながら、なるほどある意味最も確実なもの。しかしそれでも奇策は奇策でしかなく、におにはダメージが溜まっていく上に、におを案じた菊千代が帰ってきてしまい……


 と、そんな万事休すのところに救い主が! という展開はある意味お約束ではありますが、しかしやはり子供たちが自分の信念を貫き、持てる力を全て振り絞ってギリギリまで踏ん張ったところに、大人が後を引き取るというのは、これは素直に燃える展開であります。
 新選組でも一二を争う実力者であるこの人が来たからにはもう安心、武人タイプのようでいて妙に口数の多い直純の言葉にも、短く的確に切り返す姿には惚れ惚れするのですが(特に誰にも信じてもらえないと言いつつ、自分が戦う理由を語る辺り)――何だか途中から雲行きが怪しくなり、同レベルというより子供の喧嘩になってしまうのはどうしたものか?

 この辺りのギャグも入ったキャラのやりとりは、本作ならではの味わいであることは間違いありませんし、よく考えなくともこの人も実は大人という年齢ではないのですが、ちょっと勿体ないというか……
 結局血の立志団との対決はまだまだ続くようで、本作はしばらくオリジナルの敵と戦うことになるようです。


 何はともあれ危機を乗り越えて絆を深めたにおと菊千代。物怖じしないにおと拘らない菊千代のやりとりは実に微笑ましいのですが、いつまでも共にいられるわけではありません。
 思わぬ形で時代の川(?)を目の当たりにした(かもしれない)におですが、今はまだか細い彼の前のそれが、はたして如何なる流れを経て、どこにたどり着くのか――まだまだ先は全くわかりません。

 わからないといえば、この巻のラストでは、揃いの羽織の代金のために、ミブロの面々が金策に――それもいかにもらしいやり方で――奔走することになりますが、その中で、はじめが訪ねた先で呼びかけられた名前は一体……
 はじめ、あるいは斎藤一を名乗りつつも、我々の知る斎藤一とは少々異なる姿で登場していた彼。本作ならではのアレンジかと思っていましたが、そもそも彼は何者なのか? 当然と思っていた前提を覆されたわけで、この先の展開が気にならないはずがないのです。


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