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2022.10.16

『忍たま乱太郎』スペシャルウィークのインパクト

 今年で実に放送30周年を迎えた『忍たま乱太郎』ですが、10/10の週はスペシャルウィークというべき一週間――「思い出」をテーマに原作者である尼子騒兵衛がプロットを担当、しかも作品でも人気の高い6年生の過去を描く回が中心という、大盤振る舞いの一週間でした。

 というわけで、放送前からファンの間では相当に話題となっていたこの一週間。正直なところ、最初にこの報を聞いたときには、過去エピソードとはいってもセリフで処理されたり、さわりだけなのでは――などとひねくれたことを思ってしまったのですが、原作者監修の下で設定された、6年生が1年生だった時のキャラクターデザインを見せられてしまったら、これはもう真顔にならざるを得ません。

 そんなわけで私も楽しみにしていたところでしたが、さてその内容はといえば――
 自他に厳しく、いかなる時も鍛錬を怠らない潮江文次郎が、実は一番他人に甘いと、立花仙蔵が二人の過去を語る「鍛練のはじまりの段」
 最近、自分を避けるそぶりを見せる浜守一郎に対し、食満留三郎がかつて一人で籠城していた守一郎の過去を慮る「籠城の記憶の段」
 忍術学園を訪ねたカメ子が中在家長次とともに図書室の掃除をする中で、長次が無口になったわけを知る「無口なわけの段」
 今日も今日とて善法寺伊作の不運に巻き込まれた食満留三郎が、これも自分の勝負の一つと二人の思い出を語る「同室の思い出の段」
 山田先生一家と初めて出会った際に利吉に手当をされたことを思い出した土井先生を通じて、二人の過去の交流が描かれる「思い出した手当ての段」

 いずれのエピソードも、個々のキャラクターの現在の性格や得意武器などについて、過去を描くことで掘り下げるという内容で、これまで設定上はあったものや、想像はされていたけれども描かれていなかったものが明らかになるという、キャラのファンにはたまらないものでしたが――これはある意味想像通りといえば想像通りだったかもしれません。

 しかし想像していなかったのは、各話に共通するコンセプトとして、「お兄ちゃん」というキーワードが設定されていたことであります。
 各話のメインとなるキャラに対して、あるいはメインとなるキャラが、自分と縁の深い相手に「お兄ちゃん」と呼びかける――言葉で書けばなるほど、という印象ではありますが、実際に声がついてドラマの中で描かれると、その破壊力は絶大としかいいようがありません。

 特に、「鍛練のはじまりの段」で、長髪美形の火薬使いというある意味一番忍者ものの忍者らしい仙蔵の口から――あるいは「思い出した手当ての段」で、フリーの忍者として既に忍たまたちの大先輩として活躍している利吉の口から、それぞれ発せられる「お兄ちゃん」は凄まじいインパクトで、公式がここまでやっていいのか!? と私も驚いたくらいですから、ファンの方は悶絶していたのでは――と余計な心配をしてしまったほどでした。


 しかしこの『忍たま乱太郎』という作品は、考えてみれば基本的に時間の流れがない――それこそ30年間、乱太郎たちが1年生を続けている――世界で展開する物語であります。
 そんな世界において、はたして如何にキャラクターの「過去」というものを描くか――という時に、憧れの対象として、乗り越えるべき相手として、あるいは頼りになる存在として、自分の先を行く「お兄ちゃん」という存在をフックとすることは、なるほど納得できるように感じます。

 今回のプロットを担当するにあたり、原作者のコメントを拝見すると「彼らは、なぜ、その武器を得意武器としているのか、とか、今のその性格はどこからきているのか、と。そこで、共通のコンセプトを『お兄ちゃん』に据えて考えてみることにしました。すると、自然と見えてきました。彼らの『今』が。」と述べているのは、まさにこのことであったかと納得した次第です。


 ちなみにこれはまったく蛇足ではありますが、我が家の小さい住人がこの週のエピソードを観ていて、その日のうちに四回もリピートをせがまれたのは「思い出した手当ての段」。これはさすがは初恋泥棒コンビというべきか……?


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