高橋留美子『MAO』第14巻 摩緒と菜花と三つの事件
『異伝・絵本草子 半妖の夜叉姫』第3巻と同時発売の『MAO』第14巻では、摩緒の本業(?)にまつわる3つの事件が描かれることになります。その中で少しずつ近づいていく摩緒と菜花との関係、新御降家との(思わぬ)対決の行方は……
平安時代に端を発する御降家の後継者を巡る呪いと、大正時代に御降家を復興せんとする者たちとの戦い。その中心にいる摩緒と菜花ですが、今回は摩緒の表の顔というべき陰陽師や医者の立場から、怪異な事件に関わっていくことになります。
そしてこの巻の冒頭に描かれるのは、前巻ラストからスタートした廃屋の祟りにまつわる事件。無数の浮遊霊が集まる廃屋を祓うために乗り込んだ摩緒と菜花、乙弥ですが、その前に祟りの中心と呼ぶべき古井戸から奇怪な妖が現れ――ということで、思わぬ難敵に摩緒は直面することになります。
というのも、祟りを祓うためには井戸の中の水神を取り戻す必要がありますが、そこはいわば水と一体化した妖の巣穴、しかも妖の方はどんどん増殖する上に、元が水だけに斬っても斬っても復活してしまう――そんな状況で一か八かの賭けに出た摩緒を助けるために、菜花は再び妖刀・地血丸を抜くことになります。
奇怪な曰く因縁の末に菜花の手に収まった地血丸ですが、元々は人々の血を啜る妖刀。今は菜花の手で絶大な力を発揮するとはいえ、その代償に菜花の血を吸い取っていく――というまさに諸刃の剣だったのですが、数度に渡って展開してきた菜花と地血丸の「対決」に、今回ついに終止符が打たれた感があります。
そして戦い終わり、菜花を労うと称してほとんどデート状態となった摩緒ですが――菜花の方は以前からでしたが、摩緒の方も確かに菜花に惹かれている様子であります。
しかし両片思いはある意味ラブコメの――いや高橋漫画の王道ですが、摩緒の場合は高橋主人公の中でも屈指のクール系男子。いや、クール系というよりは、ほぼ九百年という長きに渡り、しかも(乙弥を除けば)一人で生きてきたであろう摩緒の心が、普通の青年並みの心の動きを見せるのは、まだまだ先になることでしょう。
それは時間が解決するのか、それとも――ある意味呪いの謎解き以上に、先は長いかもしれません。
そして続いて摩緒と菜花が挑むのは、とある屋敷の主にかけられた呪いであります。この呪い、式神を用いた金の気のもの――とくればまず頭に浮かぶのは、新御降家に与する傀儡の針の使い手・かがりですが、その正体は当たらずとも遠からず――何故ならば、その呪いの主はかがりの姉・綾女なのですから。
しかし姉と妹ではかなり態度が異なり、あっさりと摩緒に呪いを返されても、既にもらうものはもらったとビジネスライクな綾女に対して、自分の実力を見せるチャンスとばかりに、菜花そして摩緒に襲いかかるかがり。しかし以前は傀儡の針で摩緒を操りましたが、それはあくまでも不意打ちという状況であればこそ、かがりと摩緒との一対一の対決の行方は……
蓮次・双馬・芽生と、それぞれに重い事情を背負った新御降家の面々ですが、その中で一人、周囲と異なるある種の軽さを感じさせるかがり(もう一人、流石も異常に軽いのですが、まだ登場したばかりということもあってちょっと保留)。今回その家庭事情が明らかになったわけですが、なるほどこういう状況であのようなキャラになったのか、とある意味理解できるところではあります。
しかし彼女の事情と性格を考えれば、新御降家に近づくことは、明らかに彼女を不幸に近づけていると感じさせられます。
平安組のように呪いに縛られているわけはでない大正組は、それだけに新御降家に加わる理由もそれぞれ。だからこそ、その行動の行方が気にかかるのですが――その一人としてかがりがどのような運命を辿るのか。正直なところ感情移入できるキャラではありませんが、とはいっても不幸なことにはならないでほしい――そんな気分であります。
そしてこの巻のラストでは、新たな呪具を巡る惨劇が勃発。呪具に挑む摩緒ですが、その場には新御降家の流石の姿も現れて――と、これまた先が読めません。
この巻では御降家の呪いを巡る大きな物語の展開はなかっただけに、そろそろそちらの方の動きも期待したいところですが……
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