『怪獣蛇九魔の猛襲』 激突、岩見重太郎vs怪物狒々&仮面の妖賊!
かなりレアな作品の配信もある東映時代劇YouTubeでいきなり配信されたこの作品――タイトルだけでは絶対わかりませんが、岩見重太郎の狒々退治を題材とした大活劇であります。大狒々を操り人々を苦しめる妖賊・蛇九魔(ジャグマ)に挑む岩見重太郎の活躍や如何に!?
小早川隆景の治める筑前に出没し、人々を苦しめる妖賊・蛇九魔。狙った家には白羽の矢を打ち込み、恐るべき怪力の狒々と、奇怪な仮面の一団でもって蹂躙するこの賊に対して、小早川家の忠臣・岩見重左衛門が討伐奉行に命じられることになります。
しかしそれは重左衛門を除き、お家乗っ取りを謀る家老・結城帯刀の陰謀――蛇九魔討伐に出陣した重左衛門は、帯刀の一味である剣術指南役・広瀬軍蔵に足を引っ張られたこともあって失敗し、閉門を申しつけられるのでした。
そんな中に帰ってきたのが豪傑・岩見重太郎――父に勘当され諸国武者修行に出ていた彼は、密かに市井の長屋に身を潜めて蛇九魔の一党を追い、長屋の仲間たちとともに、蛇九魔との対決を決意するのでした。
罠をはって蛇九魔を誘き寄せ、激闘を繰り広げたものの、惜しいところで取り逃がしてしまった重太郎。さらに最愛の女性・園絵を狒々に攫われてしまった重太郎は、僅かな手掛かりで敵の跡を追い、意外な本拠にたどり着きます。
しかし時同じくして帯刀一味が蜂起、隆景や重左衛門の運命は風前の灯火に……
残念ながら現代ではすっかり知名度が低くなってしまいましたが、講談などでは定番のヒーローであった岩見重太郎。その重太郎の物語といえば、狒々退治と天橋立での仇討ちが二大イベントになるのですが、本作はそのうち狒々退治を、奸臣によるお家乗っ取りの陰謀と搦めて描くユニークな作品です。
講談などで重太郎が対決する狒々は、山中に潜み、狙った家に文字通り白羽の矢を立てて生贄を求めるという、妖怪とも神ともいえるような存在です。
しかし本作の狒々は、密かに奸臣と結んで跳梁する仮面の怪人・蛇九魔に操られて暴れまわる怪物。人里離れた場所に現れるのではなく、町中に殴り込んでくる狒々というのはなかなか斬新かつインパクト十分であります。
(その一方で、生贄に扮した重太郎が狒々をおびき出して――という講談などで定番のくだりが、ちょっとアレンジされた形で再現されているのも楽しい)
その狒々のビジュアルは白いゴリラという印象で、強さ的にも重太郎と素手でやり合って結構押されるというレベル(これはまあ、重太郎がスゴい)で、タイトルの怪獣=狒々というわりには少々おとなしめではあります。
しかし時代劇ではお馴染みの、奸臣によるお家乗っ取りに狒々が乱入してくるという場面だけでも本作の価値はある――というのは言いすぎですが、基本的には尽くこちらの予想通りに展開する物語の中で、狒々が異次元のインパクトを生み出しているのは間違いありません。
もっとも、予想通りといいつつも、蛇九魔が小早川家を狙う理由にはちょっと伝奇的な因縁がありますし(史実からすると逆恨み感がありますが……)、重太郎の仲間が、俺たちの町は俺たちが守る! とばかりに立ち上がった長屋の連中というのも、大いに楽しいところであります。
ちなみに(書くのが遅れましたが)本作で岩見重太郎を演じるのは里見浩太朗。デビューしてからわずか4年という時期だけに線の細さはありますが、豪傑というより若き暴れん坊(幼馴染とのヒロインとの健康なイチャイチャぶりが楽しい)といった印象の、本作の重太郎にはよく似合います。
また、長屋の住人の一人で、宝蔵院流の槍術が自慢の浪人・早水進介も、イケメンながらお調子者で楽しいキャラなのですが、どこかで見た顔だなあ――と思ったら品川隆二だったのには納得であります。
さて、物語の方は重太郎が奸臣と蛇九魔を倒して大団円――と言いたいところですが、乱戦の中で父・重左衛門が広瀬軍蔵の手にかかり、重太郎が仇討ちに旅立つという結末を迎えます。実は本作には続編の『逆襲天橋立』があるとのことで、言うまでもなく、これは先に述べた重太郎のもう一つの冒険・天橋立の仇討ちが題材なのでしょう。
本作に続き、『逆襲天橋立』も東映時代劇YouTubeで配信されるとのことで、こちらも楽しみにしているところです。
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