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2022.11.07

細川忠孝『ツワモノガタリ』第4巻 迷いながらも己の道を行く者へのエール

 新選組の強者たちが、かつて繰り広げた死闘を語る『ツワモノガタリ』、待望の第四巻のメインとなるのは原田左之助と高杉晋作の異次元対決。水と油の二人が、槍と刀を交わした末に至る境地とは……。そしてまた、この巻では新たな勝負も始まることになります。

 「この国において最強の剣客は誰か?」という問いに答えるため、新選組の強者たちが語る死闘の数々――その三番目に名乗りを挙げたのは、あの原田左之助。上には上がいると剣を断念し、さらなる強さを求めて谷三十郎から種田流槍術を学んだ左之助。しかしそれにも飽き足らず、次に宝蔵院流槍術を学んだ末に、左之助は前代未聞の種田宝蔵院流を名乗ることになります。
 そして新選組として京に出た左之助は、新選組隊士に土方から下された命――長州藩の重要人物を見つけ次第、因縁を吹っかけてでも殺せ――に応えて、町で偶然出会った高杉晋作と決闘するに至るのですが……


 かくて始まった三の段、種田宝蔵院流 原田左之助 対 柳生新陰流 高杉晋作。しかしこの二人、史実での接点は皆無のはずです。
 流派の上でも種田宝蔵院流と柳生新陰流と異なり(これはまあ接点が実はあるのですが)、何よりも得物は槍と刀と異なる点だらけ――言い換えれば二人を結ぶ因縁がないということであって、本作のような格闘漫画スタイルの作品では、大きなハンデにも思われます。――が、この二人の対決が、始まってみれば実に面白いのです。

 後にネゴシエーター、あるいは戦略家として活躍したように、高杉晋作は人の心を読み、動かす才がある一方で、直情径行の左之助は駆け引きが大の苦手であります。
 しかも高杉の柳生新陰流は、後の先を基本とする流派。ということは相手の動きを観察し、如何に動かすかという剣流――あたかも高杉のためにあるかのような剣に対し、左之助はあまりに分の悪い戦いを強いられることになります。

 もちろん剣力という点では、まだまだ高杉より上の人間はいることでしょう。また本来であれば、槍は剣に対して絶対的に有利な武器でもあります。
 しかし、このように左之助にとって高杉は相性の悪すぎる相手。高杉の心理戦が勝つか、左之助の叩き上げ槍法が勝つか――ここに水と油の両者は驚くほどに噛み合い、一進一退の攻防を繰り広げるのです。


 さて、言うまでもなく、ここで描かれる二人の人物像――そしてそれを踏まえた二人の武芸は、本作なりのフィクションなのでしょう。しかし、その人物像は、彼らの史実での行動から、いわば逆算して描かれるものでもあります。
 だからこそここで繰り広げられる二人の決闘は、そしてその中で見せる二人の魂のぶつかり合いには、一種の歴史ものとして違和感がない――大袈裟に言えば、彼らの史実での歩みが、ここでの戦いに象徴されているとすら感じられます。

 そしてその極みというべきが、戦いの中で左之助と彼の属する新選組を、新たな時代を作る同志として迎えようとする高杉に対する、左之助の答えにあります。これぞ左之助、これぞ新選組! と言いたくなるようなその答えには(左之助の過去の行動を知っているとニヤリとできる部分もあって)痺れるばかりであります。

 もちろん、それでも左之助の不利は変わりません。そんな状況の中で彼を突き動かしたものは何か、そしてそんな彼を支える強さの源は何か――それが明らかになる瞬間の感動を何と表すべきでしょうか。それは左之助に対する、いや迷いながらも己の道を行くために不器用な努力を続ける全ての者たちへの最高のエールとして感じられます。

 意外な、しかし最高に「らしい」、そして爽やかな幕切れ――それぞれに見事であったこれまでの三つの勝負の中で、最も印象に残った一戦かもしれません。
(途中から異常に存在感を発揮する、解説役の山﨑烝が、意外な役割を演じるオチも良し)


 そしてこの巻の終盤から始まるのは、四の段――一刀流 斎藤一 対 我流 河上彦斎。ある意味因縁の対決――というのは置いておいて、この巻の段階ではその決闘に至るまでの斎藤の姿が描かれることになります。
 新選組最強と評される剣客の一角である斎藤の意外な素顔と、そこから生まれる彼の剣にまず驚かされるのですが、そんな斎藤が物の怪の類に近いと評する彦斎の剣とは――いよいよ開戦であります。

(ちなみに、この巻では隊士が口を揃えて「新選組最強の剣客」と評する人物の、その力の一端が描かれるのですが――その「最強」っぷりもまた最高。いつかこの人物の勝負も見たいものです)


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