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2022.11.04

相田裕『勇気あるものより散れ』第3巻 船上の剣戟! 不死者vs不死者、眷属vs眷属

 不老不死の過酷な運命を背負った少女・シノと、戊辰戦争で死に損ねた会津武士・春安の戦いを描く物語もこれで第3巻。銀座での死闘を、大きな犠牲を払いながらも切り抜けた主従ですが、二人の前に新たな現れたのはシノの姉と兄――不死者同士の戦いはさらに激化することに?

 長きに渡り、幕府に利用されてきた不死の一族「半隠る化野民」の末裔である九皐シノと出会い、その眷属となった鬼生田春安。心が壊れた母を救うため、その命を絶つ力を持つ妖刀・殺生石を求めるシノを助ける春安と仲間たちは、化野民を管轄する太政官図書掛との戦いを余儀なくされることになります。
 ついにはガトリング砲まで持ち出した図書掛と銀座煉瓦街で死闘を繰り広げた末、追い詰められたシノと春安。二人は会津の少年・鉄馬が死を賭して振るった殺生石の力で、辛くもその場を逃れるのですが……

 と、立場的には完全に政府に仇なすテロリスト扱いとなってしまったシノと春安たち。二人は不死の力を持つから良いようなものの、生身の仲間たちは銀座での戦いに傷つき、大打撃を受けた状態であります。
 意外な人物(なるほど、と納得!)の助けで、辛くもその場を逃れたシノと春安は、一旦仲間たちと別れ、川蒸気で深川に向かうのですが――その前に新たな敵が姿を現すことになります。

 それはシノの兄・生松と、その眷属・鵜飼菊滋。見かけは少年ながらも神道無念流の立居合・アマツバメを操る生松と、元・水戸藩士の巨漢である菊滋――その両者と、川蒸気の上で繰り広げられる激闘が、この巻のクライマックスと言ってよいでしょう。

 シノと生松、春安と菊滋――それぞれに剣の達人であり、不死者でもある二組の戦いは、前巻の少数対多数、剣対銃というある意味一方的な戦いに比べると、はるかに実力伯仲した好勝負。
 銀化という一種の強化モードを持つ化野民同士のスピード感に溢れた戦い、共に元武士としての激しい剣戟を見せる眷属同士の戦い――好対照の二組の戦いは、川蒸気というステージの面白さもあり、ここまで見せてくれるのか、と嬉しい驚きを味わいました。この巻というより、これまで本作で描かれてきた戦いの中でも、ベストのものと言ってよいかと思います。


 戦いは二人の姉である煙花とその眷属・壽女の登場で水入りとなり、ひとまずの平穏な時を味わうシノですが――しかし同じ化野民の中でも、シノはもちろんのこと、生松と煙花も微妙にその立場を異にしている様子で、この先どうなるか、予断を許しません。
 菊滋も壽女も主に忠実ではあるものの、好感の持てる常識人と思われるだけに――そしてシノと春安のちょっと微笑ましい心の交流も描かれただけに――少なくとも化野民と眷属同士の争いはこれ以上見たくない、という思いもあるのですが……


 それにしてもこの巻のラストに出てきた巡査さん、やはり明治ものではもはや常連のあの人なのでしょうか。
 いや、名字といい、会津に何やら思い入れがある様子といい、まず確定だと思いますが……


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