松浦だるま『太陽と月の鋼』第5巻 新たなる旅へ そしていきなりの博奕勝負!?
愛する妻の失踪をきっかけに、奇怪な通力使いたちとの戦いに巻き込まれることになった竜土鋼之助の物語も、かつての天狗小僧・高山嘉津間の登場によりターニングポイントを迎えることになります。嘉津間が語る土御門晴雄の過去とは、そして鋼之助の向かうべき先は……
月を攫い、ある目的に利用せんとする土御門晴雄の配下との死闘の末に倒れたところを、二人組の売卜に助けられた鋼之助と明。そこに現れた売卜の師匠――かつては天狗小僧寅吉と呼ばれた男・高山嘉津間は、鋼之助たちに、自分と晴雄の過去を語ることになります。
優しく繊細な心を持ち、己の強すぎる通力に振り回されて苦しむかつての晴雄に、その力との向き合い方を教えた嘉津間。しかし長じるにつれて異常な部分を見せ始め、その力を他人に振るうようになった晴雄に危険なものを感じるようになった嘉津間は……
と、この巻の冒頭で語られるのは、前巻から続く晴雄と嘉津間の因縁の続きであります。幼い頃に「死んだ」晴雄は、晴親の泰山府君の法によって蘇生したというのですが、その時に彼の体に入ったモノとは――何となく予想はつくような気はしますが、殺生石の封印を解こうとするその企みは、いずれにせよこの世に生きる者たちにとって危険過ぎるとしか言いようがありません。
しかし、ある意味土御門家以上の通力を持つ嘉津間さえも晴雄の恐るべき力には及ばず、晴親たちの助けを得てその場から逃れるのがやっとだったというのですから、晴雄の力の強大さは推して測るべし。果たしてこの先、素人同然の鋼之助に打つ手はあるのか?
しかしたとえどれほど険しい道であったとしても、愛する月のため、鋼之助に退くという選択肢がないのは言うまでもありません。壺中天に残ってやるべきことがあるという嘉津間に代わり、卜竹を案内役兼師匠(!)として加え、新たに三人の旅路となった鋼之助は、嘉津間の指示で、下総の諏訪明神に飛ぶことになります。
同行してくれないとはいえ、仲間は増えたしショートカットはしてくれるし、やはり嘉津間の存在は、頼もしいことは間違いありません。何しろ、これまで何が起きているのか全く分からず、ただ翻弄されるばかりの孤独な状況だったのですから……
などと思っていたら甘かった。何故か飛んだ先で明と卜竹とはぐれた鋼之助が飛び出した先は、破落戸たちのたむろする鉄火場のまっただ中。そこであわや簀巻きにされるところだった鋼之助は、天朸と名乗る妙に人懐っこい男に救われ、成り行きで彼から博打の手ほどきを受けるのですが――やがて天朸の異常性が明らかになっていくことになります。
異常に賭けに執着し、その一方で己の命を賭けることにも頓着しない。しかしそんな天朸相手の博打に敗れた者の運命は――そう、ここで展開されるのは、意外にもギャンブル編なのであります。
成り行きから、最も大切な者の命を賭けた博打を天朸と打つことになった鋼之助。博打には全く縁のなかった彼にはあまりにも分の悪い、しかし絶対に負けるわけにはいかない勝負に挑むことになった鋼之助の運命は――いやはや、明でも先の読めないような展開の連続であります。
ちなみにこの鉄火場、繁蔵というやくざ者や、平田先生もいう用心棒がいたりして、思わずニヤリとさせられるのですが――なるほど本作の舞台はおそらく天保十三年、この先も色々と面白い人物が顔を出してくれるかもしれません。
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