『ゴールデンカムイ』 第四十二話「甘い嘘」
登別を訪れた鶴見中尉の下から、刺青人皮を奪った有古。実は土方派についていた有古だが、鶴見はそれを見越して有古を二重スパイに仕立てようとしていた。一方、大泊では、鯉登が月島に対して、かつての誘拐騒動が鶴見中尉たちによる狂言だったのではと問い詰めるが……
入り組んだイヤな話、泣かせる話、再びとてもイヤな話、そして熱いんだか違うんだかな男と男の話と、各陣営で人間関係盛りだくさんの今回。原作第21巻の第207話から第211話の途中までが題材となっています。
冒頭で描かれるのは、第三十九話で描かれた都丹との戦いの真実。露天風呂で鶴見中尉が鯉登父の尻に手拭いをスパーンという謎のムーブ(ここ、原作でもアニメでも本当に意味がわからない)をしていたと思ったら、実は有古に倒されたはずの都丹が生存、しかもボロボロになって第七師団から追われる有古を助ける……
そんな急過ぎる展開に戸惑っていたら、そこには土方一派と鶴見一派の、しかも偽物の刺青人皮を間に置いての読み合いが――という展開が、時系列の入れ替えを挟んで描かれるのでややこしい(あまりにもややこしいせいか、アニメでは入れ替えが一つパスされていたほど)。しかしそんなややこしさに巻き込まれた有古こそ被害者であります。
父がアイヌの黄金を巡るあれこれのなかで殺されたという、ある意味アシリパに匹敵するドラマを背負った有古。それでいて本人のスタンスは作中の他のアイヌとはちょっと異なっていて、アシリパとは違う意味で新しいアイヌという印象もあるのですが――今にして思えば、今回に象徴されるように状況に振り回されてばかりで、もったいないキャラだったなあと感じます。まさか、それこそが当時のアイヌの象徴という意味付けはないとは思いますが……
何はともあれここは完全に土方側の読み勝ちで、有古と江戸貝くんの偽人皮を持っていかれただけ損の、鶴見には珍しい読み負けのようにも思えるのですが、これまた今にして思えば、菊田への嫌がらせだったのでは――というのは深読みがすぎるかもしれませんが、ここで菊田が塹壕から見た月を引き合いに出して表向き有古の変心を責めつつ、実はそれ以前から×××である己をどう思っていたのか考えると、これはたまらんものがあります。
さて、次に描かれるのはチカパシと谷垣の別れですが――別れ自体は、前回撮った活動写真の民話の中で仄めかされていたものの、しかしやはり実際に描かれると非常にグッとくるものがあります。ここで弟のように可愛がってきたチカパシを涙ながらに励まし、送り出す谷垣は、屈折したキャラの多い本作においては稀有の真っ直ぐな男(だからこそイジられまくるのですが……)であることだなあ――と改めて感じさせられます。
しかし残念なのは、谷垣が別れを告げる場面とチカパシが去っていく場面で、原作では上記の民話で谷垣が扮したカムイを思わせる鳥の姿が描かれていたのが、アニメではカットされていたのが何とも……あと、この部分は何とか前回に収めた方がより盛り上がった気もします。
そして大泊に到着した鯉登が、かつての誘拐事件の真相を糺そうとした末に、月島が答えて語るのが、今回のサブタイトルである「甘い嘘」。たとえ嘘であっても相手の望む答えを用意して、それによって意のままに操る鶴見中尉の恐ろしさを示す言葉ですが、それを語る月島自身が、その「嘘」であることに気付いているのが何とも悲しい。
そしてそんな月島の真情が現れてしまったのが、あの恐ろしい(アニメの絵はあまり恐ろしくないけれども声の演技は十分恐ろしい)「あなたたちは救われたじゃないですか」という言葉であるわけですが――それでは結局救われていない、しかしそれでも、いやだからこそ鶴見劇場から離れられない月島を救えるのは誰なのか? その辺り、この後の展開を考えると、つくづくよくできているドラマだと感じます。
そしてそんな不健全な男たちの会話を聞いてしまった白石は、酔った勢い(なのか酔ったふりなのか)で、何だか妙に物分りのいいことばかり言う杉元に食って掛かり――と、こちらは嘘が下手な男同士の正面切ってのぶつかり合いがむしろ気持ちいい。エンディングまでなだれ込んだのは尺の都合だとは思いますが、これはこれで二人の勢い余った感がなくもない――か?
と、各方面で盛り上がってきたところで次回は――何やら大変な状況らしく、当分先になってしまったのが残念ではあります。
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