「コミック乱ツインズ」2022年12月号(その一)
号数の上では今年最後となる「コミック乱ツインズ」12月号は、表紙が『そぞろ源内 大江戸さぐり控え帳』、巻頭カラーが特別読切『おんな座頭けもの道』。その他にも佳境に入った作品多数の読み応え十分の号です。今回も印象に残った作品を一つずつ紹介します。
『おんな座頭けもの道』(伊藤黒介)
前回特別読切として登場して、二度目の登場でいきなり巻頭カラーという破格の待遇で登場した本作。凄腕の武術の使い手である娘座頭の市を主人公とした連作、Webから誌面に再び登場であります。
渡し船が出るまでと、老武士・鏑木の軒先を借りてのどかな時を過ごす市。武士道に厳然たる鏑木は、しかし、町で茶屋娘に絡んだ米沢ら四人組の不良武士を制止したことから、彼らとの果たし合いを控えていたのであります。そして約定の日、果たし合いの場に向かう四人の前に市が現れて……
おんな座頭は表の顔、実は金で雇われてその凄腕を振るう市。もちろん今回も雇われて鏑木に近づいたわけですが、さてその目的と雇い主とは――と、今回はシンプルなようでいて、ひねりが加えられた物語が展開することになります。
ひたすら愚直に武士道を貫こうとする鏑木、その武士道の前に引くに引けなくなっていく米沢、そんな彼に呆れ顔の朋輩三人、鏑木の姿に喝采を送る町人――そんな人々の間を市が駆け抜けた時、何が起きるのか。はたして誰が正しかったのか、どの道が正しかったのか――索漠たる味わいが後を引きます。
『そぞろ源内 大江戸さぐり控え帳』(叶精作&天沢彰)
日本橋の手習い塾の塾長・木下が、絞殺された上に能面を被せられていたという事件の発生を、同心・浅間から聞かされた玄白。友であった木下の死に、一人で密かに調べを始める玄白ですが、木下と知人であったことを隠していた彼に、浅間は不信感を抱きます。
修験者や巫女が集まる霊山で知られる東北の山陰藩の出身だった木下。彼の死と能面には、その過去が関わっているようなのですが……
医学のためといいつつ、解剖が趣味のような剣呑なキャラクターとして設定され、ある意味源内以上に印象に残る本作の玄白。有名人であるだけにそれ以上のキャラ付けはないものと思い込んでいましたが、どうやらその過去には複雑なものがありそうです。
その一方で、今回のエピソードの中心となる能面殺人事件の方は、今回の描写で何となく真相が予想されるのですが、さて……
『暁の犬』(高瀬理恵&鳥羽亮)
二胴部隊の本拠というべき亀戸の隠れ屋敷を、相良率いる水野家の一隊とともに襲撃し、その中で二胴の使い手を「狼走の太刀」で真っ向から打ち破った佐内。敵の指揮官というべき坂東は取り逃がしたものの、まずは大勝利というべき結果となりましたが――同じ藩の屋敷にカチコミをかけた上、相手派閥の首を取ったとくれば、ただですむはずがないのが藩の政治というものであります(いや、どこでも大問題ですが)。
一晩明けて、佐内が平然と(将来の義父との関係に微妙に悩みつつ)「もっもっ」と飯を食っている一方で、相良は水野家の重臣たちの集う評定の場に召喚されることに――というわけで、激しい剣の応酬から一転、激しさと一歩間違えれば命取りという点では剣戟と変わらない言葉の戦いが描かれることになります。
しかし(ダメ)社会人であれば想像するだけでお腹が痛くなりそうなこの場を、上司の援護射撃はあったものの、見事に切り抜けた相良。カチコミの指揮もできれば弁も立つ、これは家中に相良ファンクラブが絶対にある――というのはさておき、当人は同僚から佐内のことを褒められてドヤ顔。そしてその佐内を呼び出した相良は、敵方の切り札であり、佐内の父の仇・川越を斬りに行くと告げ……
と、今回はほとんど主人公だった相良ですが、こうして見ると本作は佐内と相良のバディものとしても成立しているように見えるのが面白い。まだまだ世慣れぬ剣術バカの佐内と、裏も表も知り抜いたデキる侍の相良と――好対照の二人の存在が、ともすれば陰惨になりかねない物語に、不思議なエネルギーを与えていると感じます。
まあ相良の方は力が有り余っているのか、またもや佐内を口説きにかかり、佐内に跳ね除けられる――というわちゃわちゃぶりももう毎度のことで楽しいものがありますが、しかしそんな時間はごく一時。いよいよ次回、川越との対峙を見ることができそうです。
12月号の感想は次回に続きます。(全三回予定)
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