『どろろ』 第1話「百鬼丸の巻・その一」
天下獲りのため魔像に祈った醍醐景光の赤子が、その代償に身体の四十八箇所を奪われて、川に流されて十五年――こそ泥のどろろが袋叩きにあっているところに現れた青年・百鬼丸は、そこに出現した不気味な死霊を、両手に仕込まれた刀であっさりと倒す。その刀に魅せられるどろろだが……
これまで様々な形で語り直されてきた『どろろ』――手塚治虫の原作とならんで、その原点の一つというべき1969年のモノクロアニメ版の第一話であります。
醍醐景光が自分の野望の生贄として自分の子供の身体を四十八体の魔像に捧げ、身体の各所を欠落した子供が川に流される冒頭、野伏せりたちを両手の刃で切り捨てる百鬼丸、へまをして破落戸たちに袋叩きにあうどろろとそこに襲いかかる不定形の死霊、橋を切って落として死霊を倒す百鬼丸と、その姿に憧れてつきまとうことになるどろろ……
第一話の内容は、内容的には原作の冒頭に忠実であり、これまで様々なリメイク版でもほぼ同様の内容で描かれてきたものであります。それだけに既視感は否めないのですが――しかし今の目で見ても、そのクオリティの高さには驚かされます。
冒頭のお堂の場面からして、雨の降りしきる中、蝋燭の灯りに照らされた魔像たちの――無言ながらの、いやそれだからこその――恐ろしさと、それに語りかける景光の狂気(野太さだけでなく、甲高い声まで交えて語る納谷悟朗の名演!)と圧倒されるばかり。
それ以降も、原作よりもだいぶ大人っぽい姿の百鬼丸が、ほぼ無言のうちに野伏りたちを容赦なく斬殺(こちらを見てから原作を読み返すと、百鬼丸があまりに子供っぽくて驚きます)する場面から、蠅のたかる行き倒れの描写や、施しを請う僧に罵声を浴びせたどろろが食料を盗んで戻ってくると既に死んでいる場面など、舞台となる戦国という時代の空気を、いやというほど感じさせる殺伐とした描写が続きます。
(どろろが刀屋から刀を盗もうとする初登場シーンで、店主と客の会話から武器の需要が大きいことを見せるのも実にうまい)
マスコット的なキャラの犬のノタ(烏帽子をかぶってるのがかわいい)の登場も最小限、主題歌の「どろろの歌」の「ほげほげたらたらほげたらぽん」の脳天気なフレーズがむしろ違和感を感じさせる(しかしバックはむしろ旗を立てた一揆)ほど。時期的に既にカラーがメインの時代に、あえてモノクロ作品というのも、作品の「カラー」にはまっているとしか言いようがありません。
そんなわけで、とにかく凄いもの、きちんとしたものを作ってやろうというスタッフの意気込みが強烈に感じられる第一話なのですが――しかし正直なところ、これを観て当時の子供たちが喜んだかというと、むしろ怖がって困ったろうなあ、と思えるのが正直なところであります。
スタッフが気合いを入れれば入れるほど、(スポンサーが想定している)視聴者層がついていけなくなり、ついには路線変更――アニメや特撮でその後も幾度も繰り返されてきた悲劇の予感を、本作も感じさせます(いや、予感じゃないんですが)。
繰り返すように内容は原作通りなのですが、原作の時点で既に暗すぎるという声があったものを、さらにパワーアップしてみせれば、それはある意味当然の帰結かもしれません。もちろん現代の私のような人間が観るには、最高の作品であり、それだけに――その後の(物語外の)展開もあいまって――いまだに『どろろ』という作品の名前を遺す結果となっているのだろうな、と感じられるのもまた事実であります。
しかしこれも原作通りとはいえ、百鬼丸が目玉を落としてみせた場面でヒキ――というのはインパクトがありすぎて、文字通りに引きます……
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