やまざき貴子『LEGAの13』第1巻 絢爛豪華なヴェネチア伝奇の開幕編
16世紀後半のヴェネチアを舞台に、錬金術師(?)の美青年の奇妙な冒険を描く絢爛華麗な西洋伝奇の開幕編であります。あらゆるものを黄金に変えるという賢者の石を求める青年・レガーレが出会うという4人の人物とは、そして彼が辿る数奇な運命の行方は……
ヴェネチアで、「ストレーガ」(魔法使い)の異名を持つ薬師の父の下で見習いとして働きながら、錬金術の研究をしてきた青年レガーレ・サルヴィアティ。夜毎に盛り場で浮名を流す彼は、ある晩、占い師から「人生を変える4人の人に出会い、数奇な運命をたどる」と予言されることになります。
ほどなくして、父が「魔女」の疑いで獄に繋がれて裁判を待つ身となったレガーレは、人々の信頼厚いコルヴォロ神父にすがるのですが――実は神父のもう一つの顔は、ヴェネチアの大使を名乗って夜毎豪遊する青年・コルヴォ。そのコルヴォの密告で錬金術の研究が露見したレガーレは、父の代りに獄に繋がれたものの、罪に問われる代りに元首の下に監禁され、黄金作りの研究を命じられるのでした。
かくして自由を奪われてしまったレガーレですが、陰謀や奇妙な企みが渦巻くヴェネチア、様々な事件に巻き込まれることに……
LEGAというのは合金の意――黄金になり得る合金の材料である12の鉱物に加えて、もう一つ存在するという13番目の鉱物(?)賢者の石がタイトルの由来であります。
本作はその賢者の石を求めるレガーレの繰り広げる冒険物語――というと少し(大いに?)語弊があります。基本的にレガーレは享楽主義の遊び人、決まった相手のいないのをイイことに夜毎お相手を取っ替え引っ替え遊び歩いているような、見ようによっては呑気な青年であります。
錬金術研究が災いして元首に捕らえられ、基本的に居室と研究室から出ることを禁じられた後も、しかしマイペースは相変わらず――元首の催促もどこ吹く風のレガーレの大物ぶりが、先の見えない迷宮めいた物語のムードを、奇妙に明るいものとしています。
この第一巻は、そんなレガーレが辿る数奇な運命の序章というべき内容ですが、前後編三話の連作というスタイルで描かれます。
レガーレが囚われの身となるまでを描く第一話「浮かれた神父」に続いて描かれるのは、コルヴォの企みで女装して出かけた謝肉祭(カルネヴァーレ)でレガーレが出会った美青年は実は美女、しかも思わぬ正体の人物で――という第二話「きっつい女」。
そして元首に引っ張り出されて芸術家たちのサロンに顔を出したレガーレの学生時代の友人の再会と、フィレンツェの人間ばかりを狙う毒殺魔を描く第三話「堕・天使」。
どのエピソードも、先に述べたようなレガーレをはじめとする、どこか呑気で、しかしそれぞれに秘密や陰を抱えたキャラクターたちの姿が印象に残ります。
しかしある意味それ以上に印象に残るのは、物語の中で描かれるヴェネチアという街――そしてそこに生きる人々、集う人々を精緻に描いた画と、そこに込められた情報量であります。
写実的なタッチとはまた異なる、しかし細部に至るまで描き込まれた画が甦らせるのは、絢爛豪華で生命力に溢れ、それと同時にその中に薄暗く危険な闇を隠し持った物語世界。特に第二話に描かれたカルネヴァーレはその最たるものですが――その画と情報量にはただただ圧倒されます。
(ちなみに電子書籍で読むのであれば、できるだけ画面の大きな、解像度の高い端末をおすすめします)
そんな物語世界とレガーレの運命が行き着く先はどこなのか――長くて短い全六巻、残る巻も今後ご紹介していきたいと思います。
『LEGAの13』第1巻(やまざき貴子 小学館フラワーコミックスα) Amazon
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