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2022.12.29

たかぎ七彦『アンゴルモア 元寇合戦記 博多編』第7巻 死闘の中の「対馬」と呉越同舟

 『アンゴルモア 元寇合戦記』の博多での戦いもいよいよクライマックス。総攻撃を開始した蒙古軍を息浜で迎え撃つ日本武士団ですが、その間に博多に敵軍の上陸を許すことになります。対馬の再来を思わせる阿鼻叫喚の様相の最中、朽井迅三郎の胸中によぎる想いは……

 時ならぬ大風を「神風(テングリの風)」として総攻撃を開始した蒙古軍二万を迎え撃つ日本武士団四千。彼らの激闘は息浜を舞台に展開、蒙古の騎馬兵を相手に一歩も退かぬ迅三郎の活躍もあり、日本武士団は互角の戦いを繰り広げたかに見えたのですが――その最中、蒙古軍の別働隊が博多の西の河岸に上陸し、戦況は一気に蒙古側に傾くことになります。

 他の軍同様、やむなく撤退することとなった迅三郎たちですが、その途中に彼の目に入ったのが、対馬出身者の集落。自分の命を第一に考えれば構ってはいられないところですが、その時彼の心によぎったのは、あの壮絶かつ悲惨な対馬での戦い、いやその戦いで命を落とした者たちの姿で……


 物語の冒頭から、鎌倉武士のある意味典型として描かれてきた迅三郎。巨大な敵にも恐れず窮地にあっても怯まず、勇猛かつ冷徹な戦士として敵を屠る迅三郎ですが、しかし決して人の心を持たない男などではないこともまた、これまで描かれてきました。
 そしてこの巻の冒頭で描かれるのは、そんな迅三郎においてもいささか珍しく感じられる心の揺れ――蒙古軍に追われる中に「対馬」と接したことで、対馬での地獄を思い出した姿であります。

 言い換えれば、対馬の戦いが、彼ほどの豪の者であってもトラウマとなるほどであったということですが――しかしそれでも戦いを終えない、戦い続けるのが彼のスタイルであることも間違いありません。
 そしてそんな彼の姿勢が、ある意味「対馬」の申し子と呼ぶべき人物を救う姿は、絶望が続く物語の中でも、小さな、しかし決して軽くはない希望として感じられます。


 しかしそれでもまだ戦場が続いていることもまた事実。やたらとヒロインぶりをアピールしようとしている感のある天草太夫大蔵太子率いる天草勢の加勢はあったものの、まだまだ――いやこれまで以上に窮地は続きます。

 しかしそこで思わぬ助けとなったのが、この巻の表紙を飾った蒙古軍の義経流使い・両蔵の存在。詳しい展開は伏せますが、思わぬ形で呉越同舟、海を隔てて分かれた同門が出会ったことで――そして義経流ならではの特性が相俟って――戦場の流れが大きく変わることになるのであります。
 さらに、これまた思わぬところで頼りになるアイツも加わり、死地を逃れた迅三郎と仲間たち。しかし日本側の敗勢は変わることなく、博多の町は炎に包まれることに……

 守るべき地、依るべき地を喪った者たちの運命は、そしてそれを二度に渡り味わうこととなった迅三郎の行動は――いよいよ博多編もクライマックスであります。


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