松井優征『逃げ上手の若君』第9巻 強襲庇番衆! 鎌倉への道遠し?
ついに鎌倉奪還に向けて決起し、諏訪奪還に成功した時行と諏訪神党。時行も北条直系の名乗りを上げ、テンションMAXの状態ですが、その前に立ちふさがるのは、鎌倉を預かる足利直義直属の関東庇番衆であります。いずれも一騎当千の変t――いや猛者たちとの、女影原での戦いが始まります。
信濃守護・小笠原貞宗と、信濃国守・清原信濃守を向こうに回し、鎌倉に向かうための前哨戦にして諏訪奪還のための戦いに見事勝利した時行たち。時行の名乗りを聞き、己の意地に賭けて最後の勝負を挑んできた貞宗も一騎打ち(?)で退け、時行たちは絶好調のまま鎌倉に向かうことになります。
しかし鎌倉を守る尊氏の弟・直義はさすがの切れ者。京を狙うと称していた時行たちの真の狙いが鎌倉にあると見抜き、直属の配下である関東庇番衆に出陣を命じます。
関東庇番衆――鎌倉の復興と治安維持を進めるため、足利麾下の優秀な若者達で構成された精鋭たち。そのうち、上野に向かったのは一番組筆頭・渋川義季、二番組筆頭・岩松経家、そして五番組筆頭・石塔範家に、寄騎の斯波孫二郎――いずれも武力あるいは知力に優れ、そして何よりも足利への強い忠誠心が、様々な形の狂気となって表れたヤな連中であります。
そして北条・諏訪勢と渋川・岩松らの軍は、女影原を舞台に激しく激突することに……
というわけで、いよいよ本格的に始まった鎌倉奪還のための戦いですが、鎌倉にそうそう簡単にたどり着けるはずもないのは言うまでもありません。かくてこの巻では、女影原での大激闘が繰り広げられることになるのですが――これまで時行たちが戦ってきた信濃勢とはまたレベルの異なる強敵たちが現れることになります。
何しろ直義が己の麾下とするだけあって、関東庇番衆の筆頭クラスは、いずれも一癖も二癖もある猛者というか変態揃いであります。
猫耳烏帽子にガングロの岩松経家は戦場で女性たちを略奪するのを楽しみにしている病的な女好き、石塔範家はその反対に女性など目もくれない――と思いきや、鎧に「白拍子天女鶴子ちゃん」なる理想の女の子の絵を鎧に描く、ある意味豪の者。
そして一見一番まともそうな渋川義季は、自分の理想の武士像を相手に押し付け、ちょっとでも異なるとキレてバフを重ねまくるというとんでもねえ自己強化野郎。その自己強化ぶりたるや、信濃のDT大将こと海野幸康を遥かに上回るのですから、推して図るべしであります。
そこに卑劣な手段も喜々として使う斯波孫二郎まで加わっての庇番衆を前にしては、(あまりにキャラ的に飛び道具系が多すぎて)時行たちも翻弄されるばかり。前巻の信濃決戦も盛り上がりましたが、戦う相手はいずれも一度戦った相手ということもあって意外性は控えめ(……だったか?)でしたが、今回は初めて見る相手、しかもホームグラウンドである諏訪を離れての戦いに、苦戦必至であります。
しかしそれでも、奇天烈な戦法と変態度合いでは決して時行たちも負けません。時行と根津弧次郎主従が義季を封じるべく命懸けの追いかけっこを(いつものことながら)始めれば、範家の妄想パワーに亜也子の属性盛り過ぎ乙女パワーが挑みます。
そして単なる女好きではなく面白殺人奇剣を振るう経家には、諏訪三大将の一人・豪快雑戦闘おじさんこと望月重信と吹雪、雫と巫女の皆さんの連合チームが挑み――と、この時代の合戦てこんなだったのかしら? という疑問も浮かぶ間もない三大バトルが展開するのであります。
はたして誰がどのように勝って敗れ、誰が生き残って誰が先に行けるのか? 鎌倉への道はまだ遠い中で、先の見えない戦いはまだまだ続きます。
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