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2023.02.20

安田剛士『青のミブロ』第7巻 七つの橋の決戦 そしてミブロたちの原点

 武士の世を目指すテロ集団・血の立志団が京の町に火をかけんとするのを、こちらも総力を挙げて阻止せんとするミブロ。七つの橋を舞台に、ミブロと立志団の強者たちの激突が始まります。その中で描かれる、ミブロたちの原点とは……

 徳川幕府を倒し、世を戦国乱世とせんとする血の立志団を阻むため、戦ってきたにおとミブロたち。しかしついに決起した立志団は、「今宵亥の刻 鴨川にかかる七つの橋を落とし 京の町に火をかける」とミブロに挑戦状を叩きつけるのでした。
 この暴挙を阻むため、七つの橋、そして立志団の本拠である剣術道場・京八館に急ぐミブロの面々。しかしその前に、立志団の八人の幹部が立ち塞がり……

 というわけで、ついに始まったミブロvs立志団の全面対決。七つ+一つのステージに八人の敵という、少年漫画の王道を行くような展開に胸躍りますが、この巻では各ステージでの戦いの模様が描かれます。

 その先陣を切って二条大橋で大立ち回りを演じるのは、ある意味納得の永倉・原田コンビ。いつもながらのテンションの高さで突っ走る二人ですが、しかし揃いの羽織を作る金策の最中、博打で身ぐるみ剥がされて両刀なくした(脇差は総司たちに借りましたが)二人はまともに戦うことができるのか?
 といっても新選組ファンであればその辺りを心配する方はいないような気もしますが、もちろん二人は期待通りに桁外れの力を発揮して、立志団の幹部を二人まで撃破。そしてここで印象に残るのは、原田の無茶苦茶な強さもさることながら、永倉の内面であります。

 本作の永倉は、月代も剃らず、口ひげを生やすという、ある意味ミブロで一、二を争う武士らしくないビジュアル。しかしここで描かれるのは、彼の出自に絡めたその理由であり――それはそれでアリなのか、というのはさておき――なるほど、確かにその感覚はあるかもしれない、と思わされるのです。。


 そして続く四条大橋で待つ立志団の幹部・「扇動」と激突するのは土方。志士としての自分、というより志士としての人脈を誇る「扇動」に反発しつつも、土方は徐々に押されていくことになります。そしてその中で彼の脳裏によぎるのは、かつての試衛館での近藤や沖田との日々と、その中で彼が自得した自分の在り方なのであります。

 正直なところ、新選組ものにおいては、かなりの割合で野望――といって悪ければ風雲の志を抱く姿が描かれる土方。そしてその原動力となるのは、武士ではない自分たちが武士になるという、成り上がりの想いだったりするのですが、本作の土方はむしろそれとは正反対のキャラクターなのが面白い。
 以前、直純と対峙した際に、恩返しのために戦っていると語った姿も印象的でしたが、ここで志士としての自分の姿を大きく見せることに腐心する「扇動」との対峙の中で描かれる土方像は、かなり意外に感じられます。

 しかしだからこそ本作の土方には独自の魅力があり、そりゃあこの戦いでは完全に一観客になっていた野口も感動するわ――と納得の展開であります(己の姓に絡めたような言葉も心憎い)。


 そしてこの巻でもう一番描かれるのは、松原橋でのはじめの戦いであります。その敵となるのは、立志団のメンバーらしからぬ華美な装いの青年「鈴蘭」。その術中にまんまと嵌められたはじめもまた、自分の原点であり目標である存在のことを思い出すことになります。その名は斎藤一……!
 本作において、その存在自体が一つの疑問符であったはじめ。斎藤はじめを名乗っているものの、しかしはじめはあまりに若すぎる。そして顔見知りらしい裏稼業の元締めめいた人物が彼を呼ぶ「二代目」という言葉からすれば、「初代」が登場するのはむしろ当然なのですが――それでははじめは何故その名を名乗るのか。そして初代はどうしたのか?

 ここで描かれる不器用な暗殺者と、天涯孤独の子供の交流は、定番の組み合わせという感もありますが、そこに「強さとは何か」「何のための強さか」という問いを絡めてドラマを動かすのが本作流。なるほど、だからこそはじめは――と、これまでの彼の言動と、そこに生まれた変化の理由を感じさせる物語展開には、胸が熱くならざるを得ません。
(ここではじめが決して無敵ではない、そうそう上手くいくばかりではない、というのを描き、そして彼がそれを受け容れる結びも、また実に旨いと感じます)


 さて、橋上での戦いが続く一方で、におと近藤たちは、敵の本拠たる京八館に向かいます。そこで待つのは、かつて道場での立ち会いで近藤と意気投合した好青年・陽太郎――これまた濃く熱いドラマが展開される予感であります。


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