« 和夏弘雨『粛清新選組』第1巻 粛清を通じて描く、唯一無二の新選組 | トップページ | 『REVENGER』 第五話「Love Never Dies」 »

2023.02.04

松本救助&あかほりさとる『めんへら侍』第3巻 急展開、忠臣蔵の世界へ!?

 情緒不安定で自意識過剰のめんへら侍・鷹松左門が繰り広げるドタバタ騒動もいよいよ佳境。思わぬやらかしから松の廊下の刃傷沙汰を引き起こし、浅野と吉良、双方の板挟みとなってしまった左門。さらに周囲の美女たちとの関係も大変な状況に突入してしまった彼の向かう先は……

 旗本筆頭・鷹松家の嫡男であり、剣の腕も並々ならぬものをもつ左門。しかしその難がありすぎる性格故に自爆しまくり、周囲に騒動を巻き起こしては自己嫌悪に沈む日々であります。
 そんな彼のことを面白がり、何かとイジり倒すのは時の将軍・徳川綱吉。実は祭り好きで左門や周囲に無理を言ってはお忍びで町に繰り出す綱吉が、上野の桜を見たいと言い出したことから、大変な悲喜劇が引き起こされることになります。

 折しもその日は勅使饗応の日、儀式は終わり、一足先に城を抜け出した綱吉を追って必死に駆ける左門が向かった先は松の廊下――そこを通りかかった浅野内匠頭の長袴の裾を左門が踏んでしまったことから内匠頭は転倒。それを後ろを歩いていた吉良上野介のせいだと思い込んだ彼は、以前にも吉良に同様の目に遭わされた(と思いきや、それも左門の仕業だったのですが)と怒り爆発、刃傷沙汰に及ぶことに……

 後になってその顛末を知り、自己嫌悪に沈むとともに、必死に無関係を装おうとする左門。しかし以前から勝手に友情をぶつけてくる堀部安兵衛に強引に迫られ、罪悪感もあって、討ち入りの際には助太刀をすると約束する羽目になってしまいます。
 ところが今度は吉良上野介に呼び出され、松の廊下の原因が自分にあると知っているとちらつかされた末に、左門は吉良方の助っ人につくことを約束させられてしまうのでした。

 さらに自分の周囲も討ち入りを待ち望むのを目の当たりにして、ますます追い込まれた彼は、現実逃避の果てにかねてから嫁入りを迫られていた加賀前田家の龍姫と朝チュンすることに。さらに女難は重なり、左門はいよいよ抜き差しならない状況に追い込まれることに……


 これまでもその性格から数々のやらかしを重ね、そのたびに自己嫌悪に呻吟してきた左門。しかしこれまでのそれは、ここで描かれるものの序章に過ぎなかった――という印象すらあるこの巻の展開。
 それもそのはず、左門は史上名高い赤穂事件――すなわち忠臣蔵の世界に飛び込んでいく、というより彼のおかげで事件が引き起こされることになるのですから、自業自得というか、罪深すぎるというべきか……

 しかし単に自身が発端になっただけでなく、そこからさらに身から出たサビで、浅野と吉良の板挟みに遭うという展開は実に面白く、かつ忠臣蔵数ある中でもなかなか見られないような展開で、大いに楽しませていただきました。

 その一方で、これまで作品に登場してきたタイプの違う四人の美女のうち、ついに三人までと――というのは、これはまあ原作者らしいとしかいいようがない展開ですが、ここまで来ると可笑しいというか、しかし同情する気も失せるというか……
 正直なところ、当初から左門は「めんへら」なのか? という思いを抱えてきましたが、いよいよ普通のダメ人間なのでは――という気もいたします。

 そんな中で、左門にとっては本来唯一無二のヒロインだったはずの茶屋の看板娘・お蜜の作中でのウェイトが下がってしまったのが気になりますが――むしろ彼女にとっての「一番」にまつわるアレコレの方がインパクト絶大――さてこの先、彼女の位置づけはどうなるのか。
 それが左門の運命をも左右するような気もするのですが……


 しかし驚かされたのはこの巻のラストでのまさしく急展開。あまりの展開ゆえに夢オチか最終回を疑ってしまったほどですが、もちろんそういうこともなく、物語は終盤に突入した感があります。
 正直なところ、まだまだ色々と描けたのではないかと思いますが、それは言っても仕方がない(この巻から電子書籍オンリーになったこともあり……)。次巻迎えるであろうクライマックスを見届けたいと思います。


『めんへら侍』第3巻(松本救助&あかほりさとる 白泉社ヤングアニマルコミックス) Amazon

関連記事
松本救助&あかほりさとる『めんへら侍』第1巻 「らしさ」溢れる「なんちゃってでもない時代劇」!?
松本救助&あかほりさとる『めんへら侍』第2巻 押さえるべきは押さえた、実は真っ当な時代劇(コメディ)!?

|

« 和夏弘雨『粛清新選組』第1巻 粛清を通じて描く、唯一無二の新選組 | トップページ | 『REVENGER』 第五話「Love Never Dies」 »