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2023.04.27

士貴智志『どろろと百鬼丸伝』第8巻 人間と死霊と異邦人 相容れぬ存在の間に

 再び自分の身体の一部を取り戻す決意を新たにした百鬼丸と、自分の背負ったものを彼に語ったどろろの旅は続きます。二人が迷い込んだ先は、不気味な瞳を持つ男・鯖目が治める村。そして鯖目と共に村に睨みを効かす美女・舞姫の正体とは……

 木曽路での戦いの末に、そこで出会った人々、再会した人々と別れ、再び旅立ったどろろと百鬼丸。その途中、百鬼丸は、どろろの背中に黄金の在処を記した地図が彫られていることを知り、どろろと共にその黄金を探すこととなります。

 そんなわけで、今まで同じ二人で、しかし新たな意味を加えた旅を続けるどろろと百鬼丸が迷い込んだ先で出会ったのは、奇怪な尼僧の幽霊と、巨大な赤子の妖怪。そして妖怪に導かれるように二人が足を踏み入れたのは、巨大な三本杉が聳える里――そこで二人は、武装した百姓たちと、彼らを煽動する、どこか人間離れした同じ顔の女たちと出会うことになります。

 そこに現れたのは、死んだ魚のような目をした領主・鯖江と、人間離れした美貌の妻・舞姫。二人を前にした百鬼丸は、自分の身体の一部がここにあると悟り、鯖目の誘いを受けて屋敷に乗り込むのですが……


(ここから先、本作と『どろろ』の内容に踏み込みますのでご注意下さい)

 というわけで原典である『どろろ』の「鯖目の巻」「地獄変の巻」をベースにした内容の「鯖目の伝」を収録したこの第八巻。これまで同様に原典の内容を、そして時に細かい台詞回しまで踏まえつつも、しかし展開に新たなアレンジを加えた物語が、ここでも描かれることになります。

 不気味な男・鯖目と、人間離れしたその妻(原典での「マイマイオンバ」が、「舞姫」とアレンジされているのが面白いですし、その先にもう一ひねりあるのもいい)との対決を描くという点は原典とは同じですが――しかし百鬼丸の身体を持つ者が異なるのが、ここでの最大の相違点といえるでしょう。
 そしてその後の展開も、それを踏まえてさらに新たな物語が描かれることになります。

 実はこの点は、百鬼丸の身体を奪った妖怪にもかかわらず、宇宙から来た(まあありえないことではないのかもしれませんが)という、原典でのある種の矛盾をクリアしているというのが、特に面白いところでしょう。
 もっともそれによって、原典にあった異類婚姻譚のもの悲しさがなくなっているのは痛し痒しですが――いずれにせよ、ここである種の役割分担を行ったことで、物語の見え方が変わってきたのは間違いがないところではあります。
(その辺りは、別のキャラクターでフォローされているといえなくもないのですが)

 またそれに合わせて、原典ではえらく容赦がなかった――この辺りはその先のエピソードと合わせて、リーダーとしての素質を描いていたという気もしますが――どろろが、ここでは全く異なる優しさを見せることになるのも、好感が持てます。


 しかしあくまでも人間は人間、死霊や異邦人とは、基本的に相容れぬ存在であります。はたしてこの先に待ち受けている結末は――それは次の巻で描かれることとなります。


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