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2023.04.13

松井優征『逃げ上手の若君』第10巻 小手指ヶ原に馬頭の変態と人造武士を見た!?

 ついに単行本も二桁の大台に達し、おまけにアニメ化まで決定した『逃げ上手の若君』ですが、物語の方は逃げているヒマもない決戦の連続。足利直義直属の関東庇番衆を相手に繰り広げる女影原の戦いは続きます。そしてそれを乗り越えたとしても、更なる変態が待ち受ける小手指ヶ原の戦いが……

 北条直系の名乗りを挙げ、ついに鎌倉奪還に向けて動き出した時行。しかし足利方が手をこまねいているはずもなく、その前に関東庇番衆の精鋭が立ち塞がります。
 渋川義季、岩松経家、石塔範家、斯波孫二郎――それぞれ並々ならぬ武と個性を持つ彼らの前に苦戦を強いられる時行と諏訪神党。大混戦となった戦場で、はたして時行たちは庇番衆を倒し、鎌倉に駒を進めることができるのか……

 というわけで、女性の掠奪が生きがいの殺人奇剣使い・岩松とは望月重信と吹雪や雫たちが、心の中のリトル鶴子に萌える石塔には亜也子が、そして己の理想の武士道から外れる者を許さぬ渋川には時行と弧次郎が――それぞれ死闘・激闘を繰り広げてきましたが、それもこの巻の前半で決着することになります。

 その決着の模様についてここで詳しくは述べませんが、自分たちの持てる力を出し尽くした時行たち以上に「らしさ」を見せ、そして堂々と散っていった庇番衆に、敵ながら天晴――と言いたくなってしまうような内容であったことは間違いありません。
(特に言動はアレなのに無駄に誇らしげな石塔……)

 そしてそれと同時に、物語始まって以来の強敵を打倒した弧次郎と彼を讃える時行の姿に、そしてそこで語られる「ある真実」にグッと来てしまうのも、また事実。変態とギャグが乱舞すると同時に、熱いバトルとドラマが展開する――本作の魅力を再確認した次第です。


 が、ここまででこの巻の約半分、そして鎌倉への道もまだ半ばです。ようやく時行挙兵の報が京に届き、それを聞いた者たちが十人十色の反応を示す一方で、鎌倉から出撃するのは庇番衆第二陣――今川範満、上杉憲顕、そして雪辱を期す斯波孫二郎と、将の数こそ第一陣よりも少ないですが、しかし兵の数は驚くほどの大軍であります。

 そして時行たちと激突する場は小手指ヶ原――これまでの戦場と異なり、開けた平原で繰り広げられるのは、多数対多数の会戦。しかし兵の数で劣っていたとしても、士気の点では時行側が劣るものではないと思いきや、そこにとんでもないヤツが現れます。
 それは今川範満――馬の仮面(?)で素顔を隠した、曲者揃いの庇番衆の中でもビジュアルの時点でヤバさしか感じない変態が、ついに本領を発揮であります。

 戦況など一切構わず、騎乗で戦場を凄まじい速度で縦横無尽に走り抜け、当たるを幸い薙ぎ倒す――およそ合戦の常識からかけ離れた行動を見せる今川の爆走に、北条方はもうドン引き。しかも将を射んと欲すれば先ず――と馬の方を倒したとしても、周到に用意された替え馬に乗り換えて復活するのだからたちが悪い。
(そして妙な説得力で栄養補給。うまだいすき)

 さらにそこで様々なドーピングと改造手術によって生み出した人造武士を率いた上杉の兵が突入、戦場は庇番衆側の優位に……


 この窮地を覆すことができるのは誰か? それはここに来てそれなりに意外な出自が明らかになったあるキャラクターだったのですが、彼が繰り出した策こそ驚くべし。馬には馬を、速度には速度を、そして追いかける相手には逃げを――ここで繰り広げられるは小手指ヶ原ダービー、はたして命を賭けた競馬はどちらの勝利に終わるのか?

 今川も、そして上杉もまだまだその底を見せない状況で、物語は続きます。


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