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2023.04.22

高橋留美子『MAO』第16巻 本当の始まりはここから? 復活した最初の男

 謎が謎呼ぶ平安ー大正伝奇『MAO』も、いよいよ核心に迫る展開を見せていきます。バラバラとなった体を繋ぎ合わせ、土中から復活した土の術者・大五。いまだ意識を取り戻さぬ彼を巡り、摩緒と白眉、そして猫鬼がぶつかり合います。

 すべての始まりともいうべき紗那の死の真相(?)について、幽羅子そして夏野の口から聞かされることとなった摩緒。それは、御降家の後継者候補となった大五が何者かに殺されたことによって世を儚んだ、自殺にも等しいものでした。
 しかしそのきっかけとなった大五が、これまで夏野が集めてきた体のパーツを、そして猫鬼が現代から持ち帰った腕を繋ぎ合わせることで復活――しかしその意識は戻らぬまま、あてどなくさまようことになります。

 その存在を知り、邪鬼を放って滅ぼそうとする幽羅子、そして同様にその命を奪わんとする白眉。そこに摩緒と菜花も駆けつけ、思いも寄らぬ戦いが繰り広げられることに……

 という展開から始まったこの第16巻。これまで、一つの謎が解ければまた次の、より大きな謎が描かれることとなった本作ですが、今回の展開は、その最たるものというべきでしょう。
 御降家の後継者争い――五人の術者の殺し合いの始まりに、いやそれが始まる前に殺された大五。ある意味この争いの最初の犠牲者である彼が、何とも奇怪な形で甦ったのですから。

 はたして誰が、何のために、そしてどうやって甦らせたのか? それが全くわからないまま、これまでこの大正の世で激突してきた摩緒と白眉の間に挟まる形で、戦いが展開することになります。

 いや、そこにはもう一つの思惑が絡んでいます。それは猫鬼――明らかに大五の存在を知り、そして彼を復活させるために最後の手を下した猫鬼は、しかし大五を捕らえ、滅しようとする白眉の側を助けたではありませんか。
 自分が復活させた者を、滅ぼさんとした者に与える――あまりに不可解ではありますが、しかしこの猫鬼のある台詞が、そのヒントであることは間違いないでしょう。

 もしかすると、ここからが本当の始まりではないか――そう思わせるこの台詞には、「そう来たか!」と膝を打ちたくなりましたが、さてその予感が本当に正しいのか? それはもちろん、まだわからないのですが……


 そしてこの巻の後半では、摩緒たちは町で頻発する不審なボヤ騒動に巻き込まれることになります。
 火の気がないようなところにも火がつき、そしてその近辺で火事場泥棒が現れる。妖怪の仕業のようでいて、どうにも違和感のあるこの一件の陰には、一人の少女と、彼女を追う者たちの存在がありました。

 一年前の大震災で両親と生き別れ、こそ泥に育てられた少女。生まれながらに不思議な力を持つ彼女を狙うのは、火を操る術者の集団――と、火を操る術者といえば百火ですが、事件の背後の火の術者の存在を知り、摩緒に同行することとなった彼は、そこで思わぬ因縁に直面することになるのです。

 これまで本作では、白眉との因縁を除けば、コメディリリーフ的な印象の強かった百火。それは(いかにもある種の高橋キャラらしい)勢い任せでどこか抜けている、彼のキャラクターに因るところが大きいのですが――彼もまた、平安の世から生き続ける、そして決して元の時代には戻れない不死者の一人であることが、このエピソードからは痛いほど伝わります。

 内容的には物語の本筋には直接関わらないエピソードではありますが、しかし百火という人物を改めて掘り下げるとともに、御降家の呪いが今なお形を変えて生き続けていることを語る――そんなエピソードであります。


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