久正人『カムヤライド』第8巻 激突! 日本最古の球技 そしてヒーローvs天津神
日本最古の変身ヒーローを描く本作もいよいよ佳境に突入、第三のヒーロー(?)である神薙剣の登場に、ついに五人の天津神が動き出し、大決戦の時が――という前に、何故か始まる日本最古の球技試合。その名も「殖す葬る(ブエスボウル)」――色々と大波乱の一冊であります。
伊勢でヤマトヒメから、ヤマト王家そして自分自身の呪われた過去を知ることになったヤマトタケル。200年前の天孫降臨をきっかけとする神々の跳梁に抗するため、初代大王は天孫の肉体を使った巨人・ヤマトオオクニタマを作り出し――そして神々に抗するため、ヤマトタケルはかつてその巨人の肉を食べさせられていたのであります。
その結果自分が引き起こし、心の中に封印した惨劇の記憶をヤマトヒメから呼び起こされ、自分自身の人格を失い、神殺しの兵器・神薙剣として覚醒したヤマトタケル。神薙剣のパワー源である国津神を得るため、彼らはモンコを追うことになります。
その一方で、自分たちが追うニ=ギがヤマトタケルと一体になったことを知った天津神たちも、彼を追って……
そんな決線秒読みの緊迫した状況の中、師匠のノツチに乗せられた末、メキシコの小さな田舎町――じゃなかった菟田の土地の所有権を巡る「殖す葬る(ブエスボウル)」勝負に臨むことになったモンコ。
「殖す葬る」――黄泉の国におけるイザナギとイザナミの神話を模したその競技は、要するに投げられた球を棒で打って走り、三つの地点を巡って戻れば点が入るという、その、まあ、どこかで見たような球技で……
というわけで始まった野球勝負(ぶっちゃけた)。特撮ものではスポーツやら旅行やら時代劇やら、本筋と離れたイベント回というのがまま見られますが、まさかここで野球回とは――と、雑誌掲載時に毎回愕然としたことを思い出します。いややはりこれは単行本でまとめて読んでも、これまでの展開とは別のベクトルで凄まじいインパクトとしか言いようがありません。
そんな読者の想いはさておき、ノツチそしてトレホ親方と弟子たちと共に試合に臨むモンコですが、相手はギターケースにロケット弾仕込んでそうな三人組に加えて、大王の密偵タケゥチ、そしてコヤネことアマツ・ノリットというとんでもないメンバー。モンコは後ろ二人の正体を知らない、そしてコヤネはモンコの正体も知らないという、微妙に緊迫した状況であります。
そんな試合がただですむはずもなく、初めは野次が飛ぶくらいの平和なやきうであったはずのものが、トレホ親方のとんでもない秘密が暴露されたり、推音速狗(オオトバイ)が乱入したり、はては国津神まで雪崩込んできて……
と、最後ので何とか話の流れはもとに戻り、国津神を挟んで対峙する(ここでお互いの正体を知らぬまま変身する二人というシチュエーションが心憎い!)カムヤライドとアマツ・ノリット。
そこに神薙剣が現れ、さらに残る四人の国津神も出現、そしてもう一人のヒーロー、オトタチバナメタルも駆けつけ――ここに集った三人のヒーローと五人の大怪人!
ここからのノリット以外の四人連続見開きの天津神変身シーンも圧巻ですが、この戦いに巻き込まれた人々を守るため、ついに並び立ったカムヤライドとオトタチバナメタル、二大ヒーローの姿にはこれが見たかった! とこちらのテンションも最高潮。
さらに神薙剣も、国津神を取り込んで日本最古のフォームチェンジを披露と、これでもかと盛り上がるシーンの釣瓶打ちであります。
しかし敵は国津神を生み出す天津神、しかもアマツ・ミラールはヤマトでの復仇に燃え、そしてノリットは野球対決を経てついに本気を出し――と、パワーアップした状態。いやそれ以前に敵は五人、味方は(神薙剣もカウントするとして)三人と、単純に二人もの戦力差があります。
はたしてこの状態でモンコたちに勝ち目はあるのか? 思わぬ助っ人の登場にまだまだバトルが激化する予感を漂わせつつ、次巻に続きます。
ちなみにこの巻の裏表紙で、思わぬ形で本作の作中年代らしきものがわかって年表マニア的には大歓喜――なのですが、これは西暦何年なのだろう、という大変な問題に踏み込むことに……
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