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2023.04.24

細川忠孝『ツワモノガタリ』第6巻 真打ち登場、激突する風雲児二人!

 新選組の強者たちによる、かつて対峙した様々な強敵たちとの戦いの物語にも、いよいよ終わりが近づいてきました。その結びの五の段で登場するのは土方歳三、そして対するは坂本龍馬――互いに相容れない風雲児二人の激闘が始まります。

 ある晩行われた酒席で新選組の面々が語る、これまで戦った中で最も強い敵は誰か、という剣談。ここまでに沖田・藤堂・原田・斎藤が登場した後に、いよいよ語ることになったのは、土方歳三であります。

 土方といえば言うまでもなく鬼の副長。これまでも物語の随所で、隊士たちに睨みを効かせる姿が描かれました。その土方がいよいよ出陣となりますが――さて、本当に土方は強かったのか? という、ある意味核心を突いたところから物語が始まります。
 その答えは――シンプルかつ説得力十分なもの。その答えを踏まえて、近藤とも沖田とも違う、彼ならではの天然理心流を存分に振るう姿は、真打ち登場といったところでしょうか。


 一方、その相手となる坂本龍馬ですが――むしろ、本当に強かったのか、という問いは、彼にこそ相応しいようんも思えます。
 もちろん龍馬が北辰一刀流を修めたことは良く知られていますが、何しろ彼には、あまり実戦で剣を振るって戦うというイメージはない――というより、むしろスミス&ウェッソンの印象が強いのですから。

 そんな龍馬が土方と互角に戦えるのか? 戦えるのだ! と、力強く言い切るのが本作。しかも北辰一刀流の剣だけでなく、小栗流和兵法の柔まで修めていた龍馬は、いわば総合格闘術の使い手であります。
 一方、天然理心流の方も、剣だけでなく格闘術も含まれる総合格闘術。つまりこの一戦、天然理心流対北辰一刀流ではなく、総合格闘術対総合格闘術の対決――というわけで、解説役の永倉新八が興奮するのは無理もありません。


 そして二人の激闘が繰り広げられるのと並行して語られるのは、二人の剣士のこれまでの生き様であります。

 バラガキとして奔放に暮らしながら、天然理心流という居場所を得て、武士よりも武士らしい武士として新選組を今の位置まで引き上げた土方。型にはまらぬ生き方の末に、戦いよりも貿易を選び、武士をはじめとする身分のない国という未来を描く龍馬。
 どこまでも相容れない生き方を背負った二人の対決は、そのまま二人の思想の対決と言ってもよいかもしれません。

 が、ここで描かれた二人の姿は、これまでに様々な作品で描かれてきた土方像、龍馬像を敷衍したものに留まっているのが、個人的には残念に感じました。
 これまで様々な隊士像、様々な剣士像を描いてきた本作だけに、この二人もこれまでになかったようなものを求めていたのですが――ここでは新味が感じられなかったというのが正直なところであります。

 また、クライマックスで土方が語る武士論も、どこからその意見が出てきたのか今ひとつわからないように思えます(似たようなことを言っている原田は、そこまでに描かれた人物像と相まって説得力があったのですが)。
 この辺りのすっきりしない印象が、二人の戦いにも影響してくるように感じられます。


 と、厳しいことを言いつつも、ラストで土方が語る「本望」は無茶苦茶すぎてむしろ痛快に感じられるのも事実ではあります。
 さて、このままこの先、土方の武士道が龍馬の未来を打ち砕くのか――そしてこの戦いの後、『ツワモノガタリ』では何が語られるのか。次巻に期待したいと思います。


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