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2023.06.04

松本救助&あかほりさとる『めんへら侍』第4巻 浪士討ち入り! 八方塞がりの末の天下泰平

 めんへら侍・鷹松左門の楽しいんだか苦しいんだか楽しいんだかわからないドタバタ騒動もこれにて終幕であります。浅野と吉良、双方に助力する事になった上に、女難男難が続く左門。あちこち板挟みになった末、ついに赤穂浪士の討ち入りにまで参加する羽目になった左門の行く末や如何に!?

 松の廊下で浅野内匠頭の裾を踏んづけたばかりに、浅野家と吉良家の遺恨を勃発させることになってしまった左門。堀部安兵衛から強引に迫られて討ち入りの助太刀をすることになったと思えば、吉良上野介には松の廊下の件をちらつかされて助っ人をすると約束し――と板挟みであります。
 しかも加賀前田家の龍姫が輿入れしてきたと思えば吉原の胡蝶太夫が側室になり、その上に密かに彼を慕うくノ一の不忍いや沙月とも結ばれた左門。それだけでなく、何故か吉良左兵衛義周ともデキてしまって……

 というわけで、これまでの行いのツケが一気に回り、八方塞がりになってしまった左門。浅野と吉良の方はさすがにツラすぎますが、艶福の方はまあ――という気も一瞬しましたが、しかし安らぎの場であるはずの家で、ほとんどノルマのごとくイタすことになるというのは、まさに身の置き所がないと言うべきでしょう。

 しかしそんな状況でも、なんとか義周(この人もまあ、身の置き所がない理由の一つですが……)だけは助けたいと奔走する左門ですが、もはや打つ手なし。そして何と「寺坂吉右衛門」として討ち入りに参加する羽目になった左門の運命は……


 というわけで、ほぼ一巻丸々かけて赤穂浪士の討ち入り前後が描かれるこの最終巻。

 浅野と吉良の二股という前代未聞の状況、そして男女(含む男男)関係は四股という状態となってしまった左門ですが――これが普通の(?)主人公であれば、この状況を調子よく切り抜けられるかもしれません。しかし、ここでことごとくぶつかりまくって大ダメージというのが、左門ならではというところでしょう。

 とはいえ、そんな左門の有様を笑っていると、ヒヤリとさせられるのが本作の怖いところでもあります。赤穂浪士の討ち入りを、ほとんど座視する――いや、煽っているかにすら見える幕府。その真意は、これを最後の「戦」として、力を振るう場を求める武士たちの、そして閉塞した日常を送る町人たちの不満の捌け口とすることにありました。
 このような視点自体は本作が初めてではないはずですが、しかし左門のような人物を主人公とする物語で描くことで、大きなインパクトを持ちます。

 「戦」には必ず犠牲者がいる。そしてたとえ力を持った者でも、他者を傷つけることを望まないものがいる――当たり前ではありますが、それは常人を上回る力を持ちながらも右往左往するしかない左門の目を通じて描かれることにより、より鮮烈に感じられるのです。
(それでいて討ち入りを非難するお蜜に対して、武士の立場から左門が思わず反論してしまうくだりも皮肉でいい)


 その一方で、すっきりしない点も残るのもまた事実。やはり左門は「めんへら」とは違うのでは――というのは最初からずっと言っているので恐縮ですが、この違和感は最後まで残りました。
 あるいは左門の現代人的自我が、この時代では「めんへら」に映るというのであれば、それはそれで凄いのですが――それも少し違うように感じられます。
(もう一つ、左門が綱吉や父から武人扱いされるのも、この「めんへら」との絡みからは違和感がないわけではありません)

 とはいえ、全ての矛盾も皮肉もひとまず飲み込んで、平和の尊さを描くという結末の後味は悪くありません。左門のプライベートのことは全く解決しない――意中の相手だったお蜜には結局相手にされない――というオチもある意味納得で、まずは天下泰平、大団円というべきでしょう。

 番外編については、誰得としか言えませんが……
(そもそも左兵衛はこの結末でいいのか――いや、なんか本人は楽しそうですが)


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