栗美あい『白花繚乱 白き少女と天才軍師』第1巻
中国で最も有名な悲恋物語の一つ「梁山伯と祝英台」を大胆にアレンジし、中国の南北朝時代の梁と北魏の激突「鐘離の戦い」と絡めて描いた、田中芳樹の『奔流』の漫画化第一巻であります。「兄」の梁山伯を探す白衣の少年(?)祝英台と、梁の名将・陳慶之の出会いがもたらすものは……
時は中国の南北朝時代真っ只中の天監五年(506年)、国境で魏の大軍を防ぎ止める梁軍の軍営を訪れて叩き出されたのは、軍に加わっているという兄・梁山伯を探して旅をしてきた祝英台。しかも山賊・胡龍牙一味に目を付けられて襲われていた祝英台は、その場に現れた陳慶之なる青年に助けられることになります。
この陳慶之、軍の人間と名乗りつつも馬術も武芸も苦手という奇妙な人物。しかし驚くほどの智謀の冴えを持つ彼は、祝英台との連携で山賊一味を一網打尽にし、胡龍牙を捕らえるのでした。
そこで初めて、陳慶之が梁の武威将軍であると知って驚く祝英台。予州刺史・韋叡やその子・元直とともに、魏の中山王・元英の大軍を迎え撃つ陳慶之に手を貸すことになった祝英台(と胡龍牙)ですが、そこに急報が入ります。
韋叡と連携して西の河南城を奪取した梁の武将・王茂。しかしそこを中山王の腹心にして最強の武人・楊大眼の軍が急襲、一転窮地に陥ったというのです。
そしてその知らせの筆跡が、梁山伯のものであると知り、河南城救援を訴える祝英台。しかし中山王の軍は予州からの救援を叩き潰すべく、手ぐすね引いて待ち構えていて……
学問をするため、男装して家を飛び出した少女・祝英台が、旅の途中で出会った青年・梁山伯と学友となり、想いを深めるもののやがて引き裂かれる――という「梁山伯と祝英台」。冒頭に述べたとおり非常に有名な物語であり、今なお映画やドラマなど、様々なメディアで題材となっている物語です(日本でも皇なつきが漫画化しています)。
この物語自体は東晋の頃ということで、本作の約百数十年前のこととなりますが、それをこの時代に移し換え、この登場人物たちに絡めるか、とまず驚かされます。
これはネタバレになってしまうのかもしれませんが、この元の題材と、本作のサブタイトル「白き少女と天才軍師」を見れば、本作の祝英台もまた――なのでしょう。
(作中でもほとんど隠せてないような気もしますが、それはこのような理由によるのかもしれません)
一方、「天才軍師」に当たると思われる陳慶之の方は、伝説的な戦歴で知られる名将ですが、やはり史実でも武術も武芸も不得手だったというユニークな人物。そして彼の配下は皆白衣をまとっていたという点を、本作の祝英台が白衣をまとっている点に求めるのも、また面白い趣向だと思います。
その他、韋叡や敵方となる元英と楊大眼(さらにその妻・藩宝珠)も実在の人物ということで、この先、史実とフィクションの合間を本作がどのように縫っていくことになるのか、そしてそこで梁山伯と祝英台がどのような運命を辿ることになるのか、楽しみな本作。少女漫画との親和性も高い内容だけに、この先も期待できそうです。
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