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2023.06.14

みもり『しゃばけ』第4巻 この世に在りたいという想い(しゃばけ)の対決

 『しゃばけ』シリーズ第一作の漫画版も、ついにこの第四巻にて完結となります。若だんなの周囲の人々を巻き込んだ奇怪な連続殺人犯――ようやくその正体に目星をつけ、これ以上の凶行を防ぐべく追う若だんなですが、その最中に意外な真実を知ることになります。己の存在を賭けた追跡の結末は……

 ある晩、凄惨な殺人の現場を目撃して以来、奇怪な連続殺人に巻き込まれることとなった若だんな。一度は長崎屋にまで押し入った犯人は捕らえられ、事件は解決したかに見えたものの、その後も別々の人間による殺人が続くことになります。
 その犯人が人間ではなく、人間に次々と取り憑く妖ではないかと気付いた若だんな。はたして、最初の犯人に殺された大工が持っていた墨壺が、付喪神になる目前で傷ついていたことがわかったのですか……


 犯人同士に全く関係がないにもかかわらず、薬をよこせなどと同じようなことを口走り、薬種屋の関係者を、いや若だんなの周囲の人間を狙うという奇怪な連続殺人。その犯人は、付喪神のなりそこないであった――というのは、まさに本作ならではの趣向ですが、しかし犯人がわかったとしても、まだ最大の謎が残っています。
 それは、何故付喪神のなりそこないが薬を探すのか、そしてその薬とは何なのかということ。いわばホワイダニットの部分ですが――折しも長崎屋に訊ねてきた力ある妖・見越の入道の口から、意外な真実が語られたことにより、その謎も解けることになります。

 その真実とは――これはシリーズ読者にとってはもはや常識というべき内容ですが、シリーズ第一作の時点では、まだ若だんなも知らない事実であったというのは、いささか感慨深く感じられます。
 ――などという外側の話はともかく、それは若だんなにとっては自分という人間の在り方が全く変わってしまうような事実であります。そしてそれだけでなく、その事実が今回の殺人事件と直結し、そしてそれ故に事件を解決できなければ、若だんなの身に大変なことが――と、ここに来て若だんなが事件に挑む理由をもう一つ、それもとてつもなく重いものを加えてくるのは、巧みとしか言いようがありません。

 かくて若だんなとなりそこない、それぞれの存在を、そしてそれぞれのこの世に在りたいという想い――すなわち「しゃばけ」をぶつけ合うクライマックスは、シリーズでも有数の派手な展開となりますが、それを描くのに、漫画というメディアは、やはり適していると感じます。


 もちろん、漫画としての魅力はこのクライマックスだけではありません。この漫画版に描かれるキャラクターは、若だんなや仁吉に佐助、そしてその他の面々ももちろん、全く違和感なく、そしてただそこに居て、話しているだけで何だか楽しい――そんな作品であったかと思います。
(何故か鳴家や犬神の佐助等、もふもふ度が高めなのがちょっとおもしろい)

 第一巻の刊行からほぼ五年、思った以上に長い期間がかかりましたが、綺麗に完結したこの漫画版。またいずれ、この組み合わせで――と期待したくなる作品でした。


『しゃばけ』第4巻(みもり&畠中恵 新潮社バンチコミックス) Amazon

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