細川忠孝『ツワモノガタリ』第7巻 強者たちの剣談の終わり そして本段突入!
『ツワモノガタリ』五の段、天然理心流 土方歳三 対 北辰一刀流 坂本龍馬の激闘もいよいよ終盤。相容れぬ男二人の激突が、ついに決着します。そしてその先に待つのは本段 池田屋事件――これまで語ってきた強者たちが、多勢を相手に思う存分その技を振るうことになります。
新選組の強者たちによる剣談もいよいよ佳境、大トリを務めるのは鬼の副長・土方歳三――その相手となるのは維新の雄・坂本龍馬であります。
しかしこの二人は、その半生はある意味好対照。農民に生まれながら動乱の時代に武士に成り上がった男と、武士に生まれながら明日を夢見て武士を捨てた男――互いに己の持てる技全てをぶつけ合う戦いは、やがてその思想のぶつかり合いともいうべき域に達することになります。
「武士」として時代に殉ずることを望む土方に、かつての愚直なまでに理想を追っていた自分の姿を見て、龍馬は初めて本気で土方を斬る覚悟を固め……
と、ここまで来るとむしろ意地のぶつかり合いというところですが、しかし接点がありそうでなかった二人の間に一つの軸を設定することにより、幕末という時代に輝いた二人の姿を対照的なものとして描く構図は面白いと感じます。
が、肝心の剣術勝負としてはそこまで個性的なものにならなったという印象もあり、なによりも決着がかなり不透明(というより拍子抜け)なものであったのは残念なところです。実在の人物同士の戦いである以上、どうしても史実との整合性は取らざるを得ないのですが――これは士道不覚悟ものでは?(永倉が)
さて、この土方の語りを以てその夜の酒席はお開きとなり、新選組の強者たちの物語も終わったかに見えたのですが――しかしその数日後、大きな陰謀の存在が発覚することになります。
風の強い日に京の町に火をつけ、その混乱に乗じて京都守護職を暗殺、帝を拉致する――肥後の宮部鼎蔵、長州の吉田稔麿らによるこの陰謀を察知した新選組は、会津藩の体勢が整わない中、単独で出撃。敵の本拠を探す中、当たりを引き当てた近藤隊は、わずか十名で池田屋に突入する……
そう、ここから展開する「本段」こそは「池田屋事件」。新選組の絶頂期を飾る戦いであります。
池田屋事件といえば、いわゆる新選組ものにおいては最大級のクライマックス。本作においてもそれは変わらないのですが、しかし本作の文法――強者同士の激突というスタイルで、池田屋事件を描くことができるのか!? と思わないでもありません。
もちろん、一対一ではなく、一対多でも強いのが強者。特にこれまでメインとなることがなかった近藤勇は、ついに出番が来たとばかりの暴れっぷりです。
多勢をものともせず、むしろ俺一人で十分だとばかりにその剣を振るう近藤の姿は――かつて四の段冒頭で描かれたそれをさらにパワーアップさせたように――まさに我々の抱く「近藤勇」のイメージそのままの、豪快というか、むしろ痛快と言いたくなるほどであります。
その一方で、沖田はやはり喀血して苦戦することになるのですが、ここで彼を支えるのが、あの人物というのもグッとくる流れ。そして一度は戦線離脱した沖田は、同じく戦線離脱しながら戻ってきた男と対峙して――と、やはりこの段でも一対一の対決が、それもかなり意外な顔合わせが始まるところで、この巻は幕となります。
しかし本当に意外なのはこの後であります。最終巻となる次巻では、近藤勇が彼に相応しい超大物と激突することになるのですから。ラストまで目が離せない強者たちの激闘を楽しみにしたいと思います。
『ツワモノガタリ』第7巻(細川忠孝&山村竜也 講談社ヤンマガKCスペシャル) Amazon
関連記事
細川忠孝『ツワモノガタリ』第1巻 格闘技漫画の手法で描く幕末最強決定戦開始!
細川忠孝『ツワモノガタリ』第2巻
細川忠孝『ツワモノガタリ』第3巻 三番手・原田左之助、種田宝蔵院流の真実!
細川忠孝『ツワモノガタリ』第4巻 迷いながらも己の道を行く者へのエール
細川忠孝『ツワモノガタリ』第5巻 激突 一刀流vs我流、現実の剣vs漫画の剣!?
細川忠孝『ツワモノガタリ』第6巻 真打ち登場、激突する風雲児二人!
| 固定リンク
