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2023.07.29

出口真人『前田慶次かぶき旅』第13巻

 いよいよ豊前細川家での物語もクライマックス――徳川の忍びに操られ、慶次の命を狙う細川忠興と、罠と承知しつつ中津城に向かう慶次と、激突待ったなしであります。しかしついに対面した時そこで繰り広げられるのは何と……

 九州を気ままにかぶいて回る慶次の次なる目的地は豊前。この地を治める細川忠興の亡き妻・ガラシャに「会う」ためにやって来た慶次は、忠興の弟・興元と共に、在りし日のガラシャを偲びます。
 しかし家康直轄の伊賀の忍び集団「伊賀の影組」の鬼鴉は、忠興を操って慶次抹殺を画策。疋田陰流の達人たちをはじめ、城兵こぞって待ち受ける中津城に招かれた慶次は、罠があることなど承知の上で、その招きを受けて……

 というわけで、いよいよこの巻では、慶次が忠興のもとに乗り込むことになりますが――心配しているのは権一だけ、あとの面子は、そしてもちろん慶次本人も全く気にかけていないのはいつも通りであります。(権一はいいかげん学習すべきだと思う)
 しかしもちろん、友の危機を放っておく仲間たちではありません。疋田陰流の剣士たちが慶次を狙うのであればと、剣士連が根本から絶とうとすれば、興元は自らが通行証兼盾代わりとなって慶次と行動を共に――と、それぞれ平然と命がけの行動に出るのが痛快であります。

 さて、いよいよ忠興と直接対面する慶次ですが、もはや顔を合わせた時点で勝負あり。ここから処刑タイム(もちろん処刑されるのは忠興)かと思いきや――ガラシャを偲びに来たという慶次の笑顔が、忠興を一発でいい漢に変えてしまいます。

 しかしそこから始まった細川ガラシャ偲び語りで、ふらりとやって来た細川幽斎が、興元もガラシャに惚れていたと何の気なしにバラしてしまったからさあ大変。嫉妬深さでは有名な忠興の前でそんな話をしたら――かくてここで繰り広げられるのは、なんと忠興と興元の兄弟喧嘩!
 しかし「天下一の短気者」とその弟が、一人の女性――しかも既にこの世にない――を挟んで喧嘩を始めたら惨劇の予感しかしませんが、しかし大の男のみっともない意地の張り合いが、逆に不思議な感動を呼ぶのです。

 何よりも、ここでのみっともなさすぎる、しかしそれだけに真情溢れる忠興の姿が実にいい。
 思えば、かつて慶次を描いた漫画は、狭量な男が、時に身も世もなく大泣きする姿を描き、しかしそれがみっともなさでなく、不思議な爽やかさと解放感を感じさせてくれました。本作もまた、慶次を描く漫画として、その点は同様と感じます。

 そしてこの兄弟喧嘩の勝者は――粋な結末にこちらもニッコリ、豊前編も大団円であります。


 そしてこの巻のラストで描かれるのは、豊前編のエピローグにして、次章のプロローグというべき物語であります。
 慶次暗殺の企てに失敗したものの、もちろんあきらめることなどなく、慶次を付け狙う鬼鴉。慶次が仲間たちと離れ、一人佐々木小次郎の道場に居候していることを知り、鬼鴉は襲撃を企てるのですが……

 その顛末は言うまでもないとして、そこに駆けつけた男、慶次が待っていたその人物とは――ここでこうくるか、と言いたくなるようなあの男!
 まさか、というのもなんですが、ある意味慶次の友としては原点のようなこの男の登場は嬉しいサプライズ。これは慶次の次なる目的地でも、賑やかなことになりそうです。
(しかしちらりと出てきたもう一人の懐かしい男、あのキャラデザインのままなのはアリなのかしら……)


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