高橋功一郎『ハナシノブ 凛花捕物帳』第1巻 江戸の謎に挑む頭脳とアクションのヒロインコンビ
主にスポーツ漫画、特にゴルフもので活躍している(個人的には『剣聖ツバメ』の)作者が、「コミック乱」でシリーズ連載している変格の捕物帳であります。好奇心旺盛な呉服問屋の一人娘と、お付きの女中(実は元忍び)のコンビが、江戸を騒がす怪事件に騒々しく首を突っ込――解決します。
呉服問屋・坂田屋の一人娘・凛は、正義感が強く頭も回る美少女ながら、好奇心が強すぎるのが玉に瑕。今日も、柳原土手で暴行されて殺された茶屋娘の幽霊が出没し、見物しにいった人間が取り殺されたという噂を聞き、幽霊を目撃しようと張り込みを始めてしまいます。
そんな凛の行動に頭を悩ましているのは、彼女に可愛がられている下女中のはな。山出しで垢抜けないはなですが、かつて行き倒れた自分を拾ってくれた凛に心酔、彼女が出かける時は必ずついていくものの、それだけに凛の酔狂にはすっかり弱っている状況です。
そんな中、土手である品物を見つけ、そこから幽霊騒動の真相を見破った凛に迫る魔の手。凛が絶体絶命の窮地に陥った時、はなは隠していたその実力を発揮して……
そんな第一話に始まる本作は、漫画では比較的珍しい印象の、女性コンビを主人公とした捕物帳(的なミステリ要素のある作品)です。
実ははなは、風魔忍び――から抜けた父に技を叩き込まれた凄腕。その腕前たるや、今は六代目(おそらく小太郎)の下で江戸を警護している風魔の鳶沢甚内が、常につきまとってスカウトしようとしているほどであります。
そんなわけで頭脳担当の凛と、アクション担当のはな(といっても自分の実力は凛を含め周囲には秘密にしているのですが)が、それぞれの特技を活かして怪事件の謎を暴き、悪人を退治することになります。
この巻に収録されているのは全五話+αですが、人々を乱心させる化け狐や商家を次々と襲う髑髏の盗賊団、江戸の夜を騒がす巨大な化け猫の正体暴きがある一方で、江戸に出てきたはなの幼なじみが下手人にされた毒殺事件の真相究明など様々であります。
正直なことをいってしまえば、本作はミステリ的な側面はかなり弱い印象があります。(その中では、毒殺事件のトリックと犯人を追いつめる策はなかなか面白かったと思います)
その一方で、はなのアクション描写はかなりの迫力で、武士の剣術とはまた異なる忍びの剣を描いてみせるのに感心いたしました。また、単行本のおまけページで作者が書いているように、懸命にこの時代ならではの題材を追っているのもまた好感が持てます。
しかし本作の最大の魅力は、凛とはなという、年は近いものの、生まれや育ちが全く異なる二人の少女の友情ではないでしょうか。
はなは坂田屋でも下女中、本来であれば凛に直接仕えることはないはずの身分であります。そんなはなを凛は何故自分の一番近くに置いているのか、そしてはなは何故凛に仕えているのか――二人の純粋な姿は、作中の悪人たちが自分勝手な理屈で悪業を働くのと比して、眩しく爽やかに感じられます。
そんな二人が、この先より手強い謎解きに挑むことに期待したいと思います。
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