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2023.08.30

たかぎ七彦『アンゴルモア 元寇合戦記 博多編』第8巻

 ついに蒙古軍が上陸し、カタストロフが目前となった博多。その混乱の最中、迅三郎は同じ義経流の使い手・両蔵から、蒙古に義経流が伝わった真実を聞くことになります。そして博多を捨て、太宰府に撤退した日本武士団は、決死の反攻に出ようとするのですが……

 蒙古軍の博多上陸を阻むべく死闘を繰り広げたものの、衆寡敵せず一気に不利な状況に追い込まれた日本武士団。そんな中、暴走する高麗軍の金センと激突することとなった朽井迅三郎は、同じ義経流を操る蒙古軍の両蔵と協力してその場を乗り切るのでした。
 そしてこの巻の前半では、謎に包まれていた蒙古の義経流の正体が語られることになります。

 かつて平家を滅ぼしながらも兄に疎まれ、奥州平泉に追いつめられた源義経。しかし弁慶の犠牲もあって生き延びた義経は、残った六人の郎党を連れて北上し、交流のあったアイヌを頼って蝦夷地に渡ったというのです。
 そしてアイヌに力を貸す形で樺太に渡り、ニヴフ人との戦の助っ人となった義経は、後の間宮海峡を越え、大陸に渡ったというのですが――それから数十年後、その義経の武芸は、蒙古の兵・両蔵としてサハリンのアイヌの敵となったのであります。

 かくて樺太のアイヌに、そして日本にと、牙を剥く形で帰ってきた義経流。義経とモンゴルといえば、やはり義経=チンギスハン説が浮かぶものの、まさか今それをそのまま採用はしないだろうと思いましたが、なるほどこのような変化球で来るとは面白いところです。
(もっとも、義経=オキクルミ説を断言に近い形で書いているのは、どうかと思いますが……)

 そして、迅三郎に対して蒙古に渡った後に完成された自分の方の義経流こそが正統と誇る両蔵ですが――その主張の是非はさておき、源流を同じくする技が海を隔てた敵同士として対峙する様は、武術の何たるかを示しているようにも感じられます。


 さて、対馬の惨劇を再現するかのように、博多から多大な犠牲を払いつつ太宰府に後退した迅三郎たちですが、奇妙な運命というべきか、さらに思わぬ形で対馬を再現するかのような構図となります。
 かつて七世紀の唐との戦の際に太宰府に築かれた水城に拠ることとなった迅三郎。しかし、数百年を経て実戦に臨むことになった城に拠るというのは、対馬で迅三郎たちが拠った金田城を思い出させるではありませんか。

 あの時は迅三郎たちの奮戦むなしく、多勢の蒙古軍を相手に少しずつ守りは綻び、ついには城は総崩れという悲劇となったわけですが――さて、あまりにも不吉すぎる戦いの流れは再現されてしまうのか。
 そしてその予感を裏付けるような、あまりにも情けない事態が発生してしまうのですが、そんな中、天草太夫大蔵太子の企てを聞いた迅三郎は……

 はたしてこれが逆転の烽火となるのか? 全く先は読めぬ中、最後かもしれない戦いが始まります。


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