高橋留美子『MAO』第17巻
御降家の後継者候補の最後の(?)一人というべき大五の復活により、さらに混迷を極めることになった『MAO』。大五の復活に関わっていたと思しき夏野は何者なのか。真実を求めて不知火を追った摩緒は、思わぬ言葉を聞かされることに……
一千年前、御降家の五人の後継者候補の中で、真っ先に何者かに命を奪われた大五。しかし何者かがバラバラになった五体を集めたことにより、彼は己の意識を持たぬままに、大正の世に復活することになります。
猫鬼が糸を引くと思しきその復活の謎も解けぬ間に姿を消した大五ですが――ここで問題となるのは、同じ土の術者である夏野の存在です。
一千年前、病に侵されて余命幾ばくもない状態で、何者かとの取引によって体を維持してきた夏野。以来、大正の世に至るまで、彼女はその何者かの命じるままに、大五のそれであろう体の一部を集めてきました。
そしてこの巻の冒頭では、新御降家の一人である双馬と摩緒・菜花の戦いに加わる形となった夏野が、思わぬ「正体」を見せることとなります。
これまでの描写から、読者にとってはある程度予想がついていた夏野の正体ですが、しかし本来であれば真っ先に気付いてしかるべき摩緒たち術者が、これまで気付いていなかったというのは、考えてみれば確かに不思議な話。大五の復活を考えれば、彼女に力を貸していたのは猫鬼とも考えられますが、しかし本当にそうなのか……?
そしてそんな状況からさらに謎は深まります。御降家最後の日のことを調べるため、不知火の口から当時の状況を聞き出すべく策を巡らす摩緒。策は当たり、不知火と対峙する摩緒と菜花、夏野、華紋ですが――そこで不知火は、姉弟子であり華紋の恋人であった真砂の死について、思わぬ「真実」を語るのです。真砂を殺した妖は、紗那が操ったものであると。
その理由として不知火が語る、紗那は決して清らかな天女などではなく、嫉妬や憎悪の念を持つ人間に過ぎないという言葉は、もちろん彼の邪推に過ぎないのかもしれません。
それでも、人間の持つ昏い想い――表の顔からは想像もつかぬ陰の部分をこれまで様々な形で描いてきた作者の筆によれば、それもあるいは真実なのかもしれないと感じさせられれます。
しかし、その言葉の毒に触れて怒りの感情を露わにした摩緒が、後で菜花に語るその理由も、人間の心の自然として理解できるものであります。
そしてその一方で、彼の言葉の裏側にあるものを察しつつ、それでも彼の言葉に頷いてしまう――そんな菜花の姿もまた人間らしいなあと、そしてそんな不器用な二人の姿に、微笑ましさと好もしさを感じるのです。
そしてこの巻の終盤では、人間を妖に変え、周囲の人間たちを襲わせるという悍ましい呪具・化生の箱が出現。その箱を追って、摩緒たちと、新御降家が対決することになります。
犠牲者を求めて次から次へと居場所を変えていく箱を先に見つけるのはどちらの側か――戦いは続きます。
(ちなみにここで、蓮次と流石、華紋と百火というコンビがそれぞれ登場するのですが、どちらも妙に息が合っているのが、ちょっと楽しいところではあります)
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