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2023.08.03

青崎有吾『アンデッドガール・マーダーファルス 4』(その一)

 アニメが想像を上回る出来で毎週楽しみで仕方ない『アンデッドガール・マーダーファルス』ですが、そのアニメスタートと同じに刊行された原作第四弾であります。今回は時間軸を戻して、〈鳥籠使い〉の面々の知られざる過去を描く、豪華全五編の短編集です。

 日本でいえば明治時代後期、西暦でいえば十九世紀末――鬼の血を注入されたことであらゆる怪物を滅ぼす力を得た鬼殺し・真打津軽と、不死の肉体を持ちながらも半人半鬼に首から下を奪われた輪堂鴉夜、そして鴉夜に先祖代々仕える駒井静句の三人が、鴉夜の身体を取り戻すため、欧州で繰り広げる笑劇めいた騒動を描く本シリーズ。
 物語は、怪物専門の探偵〈鳥籠使い〉を名乗る三人が出会う様々な事件を描きますが、本書は彼女たちが如何なる過去を持つのか、そして何故探偵稼業を始めたのかを描きます。以下、一話ずつ内容を紹介しましょう。


「知られぬ日本の面影」
 津軽と鴉夜・静句が出会った翌日――町で一騒動を起こした三人と出会った風変わりな男・小泉八雲。津軽と鴉夜が怪物と知っても恐れぬ八雲は、彼の教え子の屋敷に夜毎のっぺらぼうの幽霊が現れ、奥方を怖がらせているばかりか、護衛の男二人が斬殺されたと悩みを打ち明けるのでした。
 この国を出るまでの住処と引き替えに、八雲の相談を引き受けた鴉夜ですが……

 物語の序章で出会い、そして第一章でフランスに現れた時には、既に探偵として名を上げていた一行。しかし彼らは何故、そして何時から探偵となったのか――その始まりの物語が本作であります。
 しかもその依頼人があの小泉八雲、そして対する相手はのっぺらぼう(さらに……)と、様々なクロスオーバーが魅力の一つである本作ですが、こうくるか――と驚かされます。

 そしてミステリとしては、のっぺらぼうの幽霊の謎があるわけですが――ここで鴉夜が(経験上)幽霊など存在しないと言い切るのも楽しい。いかなる謎も(それが極めて特殊なものであっても)必ず論理と物理法則の下に解き明かす、本作ならではの展開というべきでしょうか。

 もう一つ見逃せないのは、結末で明かされる犯人の動機であります。いささか唐突に見えるかもしれませんが、彼もまた、近代国家というものに排除され、奪われた者であるとすれば、それは怪物たちと同様の存在ではないのか――そんなことを考えさせられます。
 もっとも、我らが怪物たちは、そんなことは意に介さないかのように、明るく旅立っていくのですが……


「輪る夜の彼方へ流す小笹船」
 ここから三話は、〈鳥籠使い〉の三人の過去を――過去の「喪失」を描く物語。そして本作は、おそらくはこの『アンデッドガール・マーダーファルス』という物語でも、時系列的に最も古い物語でしょう。舞台は平安時代、鴉夜が「不死」になった時の物語なのですから。

 赤子の頃に難破船で一人生き残っているところを見つけられ、それ以来、奇妙な美女・蘆屋道満に育てられた鴉夜。陰陽師を名乗り、都の陰陽寮に出入りするほどの腕前を持ちながら、魔法的な術の存在を否定し、奇矯な言動を繰り返す道満ですが、鴉夜はそんな彼女を一心に慕いながら成長していきます。
 しかしそんな中、様々な人の死を目の当たりにし、死を恐れるようになった鴉夜。道満はそんな彼女にある術を施し……

 実のところ、鴉夜を「不死」にしたのが蘆屋道満であることは、前巻で寝起きの鴉夜が「ドウ様」と口にした点で予想していました。しかしここで描かれる物語は、予想だにしなかった展開の連続となります。
 そう、何故鴉夜は不死になったのか、何故鴉夜は不死にされたのか――ある意味本作最大の謎の答えがここで明らかになるのですが、その答えは……

 いやいやいや、そこでそのクロスオーバーが来るって絶対誰も予想できないから!! と盛大にツッコみたくなってしまうその真相は、しかし謎の答えとして、ある意味非常に整合性が取れたものであることは確かであります。(実は原典の設定から考えると、ちょっと疑問符がつくのですが)
 そしてそこに込められた、残酷で自分勝手で、そして切なる想いは、強く印象に残るのです。

 しかしだとしたら、この物語の結末は――と不穏な空気が漂いますが、それも一つのトリックであるかもしれません。ここはとりあえず、物語の描写をそのまま受け止めるとしましょう。


 残る三話は次回ご紹介いたします。


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