立沢克美『イクサガミ』第2巻
金十万円を賭けたデスゲームに参加した武芸の達人たちが繰り広げる死闘を描いた今村翔吾の『イクサガミ』の漫画版第二巻であります。非力な双葉を連れた不利な旅を続ける愁二郎の前に現れる骨肉の因縁。そして原作読者も知らぬ敵が登場、物語は新たなステージに進みます。
明治11年、金十万円の賞金を掲げて京都天龍寺に集められた武芸の達人たち。しかしそこで提示されたのは、京都から東京まで、七つのチェックポイントを通過するために繰り広げられるデスゲーム「こどく」――参加者に一枚ずつ与えられた木札を奪い合う、血みどろの戦いだったのです。
参加者の一人である嵯峨愁二郎は、同じく参加者ながら非力な少女・香月双葉を見過ごしにできず、不利を承知で彼女を守りながらの旅に足を踏み入れることに……
という基本設定で展開するこの『イクサガミ』、前巻ではようやく三条大橋まで来たところで現れた謎の忍び・柘植響陣に同盟を持ちかけられた二人。答えを聞くのはまだ先だと響陣は姿を消し、再び二人旅を続ける愁二郎と双葉の前に、新たな敵たちが姿を現します。
その筆頭は、斬撃の軌道を自在に変えるという奥義を操る衣笠彩八。この「こどく」参加者では数少ない女性ですが、その技の恐ろしさ以上に、愁二郎にはやりにくい相手であります。というのも彼女は愁二郎にとっては血の繋がらない兄弟妹の一人――かつて京八流の伝承者候補として育てられた八人の孤児の一人なのですから。
代々、八つの奥義をそれぞれ八人の候補者に伝え、候補者同士が殺し合い、技を奪い合うことで最後の一人が正式な伝承者となる京八流。愁二郎はその運命を厭い、継承戦の直前に逃げたのですが――しかしほとんどの候補者がこの「こどく」に参加しているというではありませんか。
一度は避けた争いが再び追ってくる――愁二郎にとっては何とも残酷で皮肉な状況ですが、さらに残酷なのは、彼が「こどく」と京八流の継承争いと、二つの戦いの中に身を置くことになったことでしょう。「こどく」とはは「蠱毒」の意――複数の候補を争わせ、最強を生み出すという点では、京八流と同様の思想、いわば二重の蠱毒を、彼は戦うことになったのですから。
そんな愁二郎の心中たるや、察するに余りあるものがありますが――しかし戦いは続きます。アイヌの天才射手であるカムイコチャとの戦いは、双葉の存在もあって避けることができたものの、その双葉を攫って襲撃してきたのは、手甲鉤・棒・弓をそれぞれ操る三人の敵。それこそは武田の三ツ者の末裔・徳良三兄弟、一人一人の技量はさほどではなくとも、三位一体の攻撃を仕掛ける強敵であります。
――と、原作読者の方はお気づきかと思いますが、この三兄弟は原作小説には登場しない、漫画オリジナルのキャラクター。オリジナルキャラは前巻にも登場しましたが、どうやらこの漫画版では、随所にオリジナルキャラを配置する趣向のようです。
原作にない戦いを描いてくれるのは、こちらとしては大歓迎、これからも期待したいところですが――しかしちょっとこの三兄弟は、ビジュアル的には地味目の印象だったのが残念なところではあります。
このビジュアル面については実は三兄弟だけでなく、例えばこの巻ではほかにも、作中では最強キャラの一人である人斬り・貫地谷無骨も、もうちょっとインパクトがある外見でもいいのではないなあ――と個人的には思わされたところです。
もちろん、舞台背景を考えれば、それほど奇抜な格好のキャラクターは出せないのはわかりますが、だからこそ少しでも漫画映えする、外連味のあるキャラを見たい――そう感じてしまうのも正直なところではあります。
(もっともカムイコチャは、原作から受けていた印象とはかなり異なるビジュアルのキャラでなかなか良かったのですが……)
双葉の立ち位置、存在する意味などを原作以上に分かり易く描くなど、評価できる点も多いだけに、さらなる漫画としての面白さを期待したいところです。
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