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2023.09.28

『アンデッドガール・マーダーファルス』 第13話「犯人の名前」

 〈鳥籠使い〉・ロイズ・〈夜宴〉の三つ巴の戦いの末に、睨み合う人間たちと人狼たちの前に現れた鴉夜。一連の殺人事件の犯人の名を挙げた彼女の呼びかけに答え、ついに犯人が人々の前にその姿を現す。その正体と一連の犯行のトリックは、そしてその動機とは……

 ついに最終回、人間と人狼、二つの村を股にかけた殺人/殺人狼事件の謎解きも大詰めです。前回の最後の最後に全ての謎を解いたと告げた鴉夜ですが、彼女が皆を集めてさてという前に、いつものOP曲に乗って繰り広げられるのは、前回のEDで繰り広げられた三つ巴の戦いの続き――アリスvsクロウリー、カイルvsヴィクター、静句vsカミーラの三元バトルであります。そこに津軽も乱入してさらに賑やかに、そして(さすがにOP後にも食い込んだものの)相当にハイテンポで展開するバトルは、それだけでもなかなかの見応えですが、これが謎解きの前座なのですから、この回の密度を思うべしであります。
 特にこのバトルの中でも、色々な意味で描写が難しそうだった静句vsカミーラ戦は、色彩的にも画的にもちょっと想像していなかったような演出で驚かされました。
(ただ、それぞれの戦後の描写が大胆にカットされたのは残念。津軽とクロウリーの会話は見たかった……)

 そして前々回に静句が、そして十三年前にローザが登らされた羊の櫓の前で睨み合う、二つの村の人々の前に現れた鴉夜が語る内容こそが、今回の事件の「犯人の名前」。密室からルイーゼを攫ったのは何者なのか。一年前から二つの村を震撼させた連続殺人/殺人狼事件の真実とは。そしてルイーゼとノラを殺したのは……
 正直なところ、ルイーゼの事件については犯人の予想がついていた方は少なくなかったかと思いますが、事件の全体像としてみると、まさに「本格」と言いたくなるようなその豪快なトリックには改めて驚かされます。内容的には、文章であればともかく、映像にするのは結構難しいものがあったわけですが、それをうまく成立させてみせたのには感心するほかありません。

 しかし感心したといえば、この複雑な事件の鴉夜による説明が、ほぼAパートで終わったことで――どうやら最終回の脚本には原作者も協力したようですが、これまで同様にかなり細かい部分は省略しているとはいえ、やはり巧みなアレンジであります。

 それでは後半は、といえば、逃走した犯人と津軽との対決、そして犯人が語る真の動機の提示という、さらなるクライマックスが用意されているのがまた心憎い。津軽のラストバトルは、冷静に考えるとこれもどうやって映像化するのか、という内容だったのですが、それを本作らしいビジュアルで見せてくれたのもお見事。もっとも、ちょっとテンポが早すぎて、あっさり決まってしまった感があったのは残念ですが……(あのオチの落差は、敵の強力さがあってこそ引き立つと思うので)
 しかし、戦いの最中に津軽が相手にかける言葉は、彼らしい諧謔に満ちたものでありつつも、ドキッとするような鋭さに満ちたもので、ある意味この物語を象徴するものであったと感じます。

 一方、犯人の真の動機ですが――犯行のトリックをほぼ完璧に見破った鴉夜が、唯一見破れなかったその動機は、明かされてみれば、どこまでも切実なものでありました。正直なところ、アニメの描写のみで真相にたどり着くのはかなり厳しいように思いますが――それでもなお、この環境、この犯人だからこそのものでありながら、しかし同時にある種の普遍性を持つからこそ、この動機からは、胸に突き刺さるような衝撃を受けます。そしてだからこそ、鴉夜のラストの選択も十分に納得できるのです。

 誰もが何かを失ったともいえるこの事件――しかしそれでもどこか爽快感が残るのは、ここで描かれたのが、束縛からの解放の物語であったからなのでしょう。

 そして元々何にも束縛されていないように見える津軽の言葉(?)で終わるこのアニメ版。原作の胸躍るエピローグが描かれなかったのは残念ですが、しかし怪物・怪人たちとの再会を予感されるラストは、これはこれで不思議な広がりを感じさせてくれます。


 仮にアニメの第二期があったとしても相当先のことになるかとは思いますが――しかしその日を期待して待ち続けたくなる快作でした。


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