貘九三口造『ABURA』第3巻
御陵衛士サイドから油小路の戦いを描くという、非常にユニークなコンセプトの新選組漫画も、この第三巻で完結であります。油小路の戦いの果てに生き残った者たちは、いかなる道を歩むのか。そしてその果てに彼らが見たものは何か――勝利者のいない戦いの結末が描かれます。
御陵衛士の長・伊東甲子太郎を暗殺し、その遺骸を油小路七条の辻に放置した新選組。罠と知りつつも、遺骸を取り戻すために向かう七人の御陵衛士を待ち受けるは幾層倍の新選組の群れ――必殺の死地を前に藤堂平助が、毛内有之助が斃れ、いま、鬼神も三舎を避ける勢いで奮闘した服部武雄もまた……
一部では新選組最強説もある服部武雄が、それを裏付けるような大激斗を繰り広げた前巻。しかし、力尽きたかに見えた服部は、なおも刀を振るい続けます。
そして、倒れる時は前のめりといわんばかりに、最後の最後まで一歩も引かなかった彼の最期を以て、油小路の戦いは終わりを告げます。仲間たちの犠牲の末に、四人の御陵衛士が逃げ延びるという結果を残して。
と、実はこの最終巻の冒頭二割くらいで油小路の戦いは終わり、残りは生き残った御陵衛士たちの、その後の戦いが描かれることになります。
いわゆる墨染事件――伏見墨染で近藤勇を狙撃した阿部十郎たち。甲陽鎮撫隊の大久保大和として出頭した近藤勇の正体を暴いた加納道之助。そして薩摩藩兵として越後出雲崎に潜入・探索の最中に正体が露見して捕らわれながらも脱出、最後の最後まで死力を尽くして戦った富山弥兵衛……
正直なところ、近藤勇絡みの二つのエピソードは、非常に有名であり、近藤勇そして新選組そのものの運命に繋がるものであるために幾度も語られてきましたが、富山弥兵衛の逸話は、あるいは漫画化されるのは初めてではないか、とすら思わされます。
ある意味(これも藤堂絡みで描かれることの多い)油小路の戦いを描くよりも珍しい、本作ならではのエピソードであったといえるでしょう。
そして幾多の戦いの果てに、明治二年の江戸で対面することとなった永倉新八と鈴木三樹三郎。そこで二人の間に流れたものは……
正直にいってこの辺りの永倉に関する描写は(確かにこの逸話も残されているのですが)どうかなあと個人的には思ってしまうものの、いわば仇敵二人の出会いが、それぞれの行動を通じて昇華されるという結末そのものは悪くないと感じます。
かくて大団円を迎えた本作ですが、正直なことを申し上げれば、やはり油小路の戦いだけを描くのはなかなか難しいものがあったという印象があります。
もちろん、そこで描かれた激闘の数々――というより服部武雄の戦いぶり――は見事でしたが、それだけに、生き残った御陵衛士たちの(富山弥兵衛以外の)その後を見せてほしかった、という気持ちはいたします。
仲間たちによって生き残った彼らが、自分の命をこの先どのように使ったのか――その後半生は平凡なものであったかもしれませんが、それだからこそそれを記すのには意味があると思った次第です。
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