やまざき貴子『LEGAの13』第5巻
恋と冒険と錬金術の伝奇絵巻もクライマックス目前、父を探してフィレンツェを訪れたレガーレの前に現れるのは、懐かしい人々の姿であります。しかしそれだけでなく、いよいよ動き出す彼を巡る因縁。はたしてレガーレに秘められた謎とは……
権力者の間で翻弄された末、離島に軟禁されて錬金術の研究をする羽目になったレガーレ。しかし軟禁先の屋敷の主ネピ・ロマーノは何とレガーレの父・ゲオルグの旧友。さらにそこでレガーレはクリストバルとピエロの二人の友人に再会するのでした。
そこで偶然蘇生薬を創り出したレガーレは、魔女としてあわや処刑されかけたところを、元首夫人の計らいで脱出。彼は、ネピや友人たちと共に、行方不明の父が目撃されたというフィレンツェに向かうことに……
というわけで、舞台をヴェネチアからフィレンツェに移し、終章に向けて動き始めたこの物語。この巻の冒頭に収録されたエピソード「葡萄屋敷の娘」は、旅の途中にレガーレたちが立ち寄った葡萄園のじゃじゃ馬娘を巡る番外編的エピソードですが、そこでレガーレは、父らしき人物が目撃されたフィレンツェ近くの教会の存在を知ることになります。
そこで次のエピソード「エセ錬金術師」では、ついにフィレンツェに到着したレガーレが、父の目を惹こうと錬金術師として大道芸を演ずることになります。
が、レガーレの前に現れたのはゲオルグではなく、コルヴォ・ポポラーレ――ある時は神父、ある時は大使、ある時は投資家と様々な顔を持つ怪人物であり、レガーレを波乱の人生に引っ張り込んだ張本人であります。
しかし考えてみれば第三巻の最初のエピソード以来、しばらく顔を見せていなかったコルヴォですが――そのエピソードで尼僧院にて不埒な振る舞いに及んでいた司祭たちを告発しようとして逆に殺されかけ、表向きは死んだことにして身を潜めていたというのですから穏やかではありません。
今はフィレンツェのとある寡婦の家に滞在しているというコルヴォですが、レガーレの冒険を黙ってみているはずもなく、あれやこれやと口を出してくるのですが……
と、一癖も二癖もある人物が登場する本作においても、極めつけに胡散臭いポポラーレの復活で、さらに賑やかになった物語。海賊に育てられた過去があったり、レガーレにしか見えないはずの幽霊(?)の少女・クラリーチェを見ることができたりと謎の多いコルヴォですが、しかし裏世界の事情に異常に詳しかったりと、頼りになる人物であることは間違いありません。
ここでも独自にゲオルグの行方を調べるなど大活躍ですが――しかしレガーレを付け狙う頬に傷持つ暗殺者・ジアン・ガレアッツォが、コルヴォの顔を見て驚いたことから、意外な方向に物語は展開します。
何やら暗殺者自身、複雑な過去を持つようですが、それがレガーレと、そしてコルヴォとどのように結びつくのか――ここではまだ全てが明らかにはなりませんが、レガーレの母と思われる女性の存在が語られたことで、さらに謎が深まるのです。
(ちなみにこのエピソード、上に述べたこととは関係なく、本作では屈指の鬱エンドであります……)
そしてラストの「花咲く都の花盗人」で登場するのは、レガーレの最愛の人・アルフォンシーナ――本作を通じてのヒロインというべき人物なのですが、しかしやはり久々の登場となった彼女は、何故か男装してフィレンツェの貴族たちから宝石を盗む怪盗アルフォンソを名乗っているという、イメチェンにもほどがある姿で登場することになります。
(ちなみにこの怪盗、前巻でちゃんと伏線が描かれているのが心憎い)
しかし彼女はヴェネチアの前元首の娘。結婚を嫌って尼僧院(上で触れたもの)に入ったものの、父が陰謀で失脚して後ろ盾がなくなり――という状況だったはずが、一体いかなる理由で怪盗になったのか?
それにはもちろん理由があるのですが――とはいえ、端正に物語を構築している本作にしては少々乱暴なのは否めませんが――しかし一番大事なことは、レガーレが心から愛し愛される相手と再会できたことであります。
もちろんレガーレもアルフォンシーナも、為すべきことがあります。そのために今は一時別れたとしても、必ずまた巡り会える――そう感じられることは、これまでの苦難を思えば、大いに希望の光に満ちあふれていると感じられるのです。
さて、コルヴォとアルフォンシーナが再登場し、いよいよ役者が揃った本作。結局この巻でも謎は増え続けていますが、いよいよ次巻最終巻にて、全ての謎が怒濤のごとく解き明かされることになります。
その次巻の紹介は、また近日中に。
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