『るろうに剣心』 第十七話「決着」
雷十太の飛飯綱で右腕に深手を負った由太郎。怒りに燃える剣心は、由太郎らの見守る中、雷十太と対決する。飛飯綱と纏飯綱の連携に追い詰められたかに見えた剣心だが、飛龍閃の一撃が雷十太を打ち破る。しかし心身に深い傷を負い独逸に旅立つ由太郎に、かける言葉もない剣心たちだが、弥彦は……
いよいよ雷十太編も今回がラスト。作者が監修に入ったこのアニメ版の真価が問われることとなる(言いすぎ)回であります。はたしてその結果は――基本的に原作の流れを忠実に踏まえつつも、しかし随所に施されたアレンジで、印象としては大きく踏み出した内容となっておりました。
前回、飛飯綱の不意打ちで右腕を負傷した剣心ですが、しかし同じ右腕の負傷であれば剣術は絶望的となった由太郎の方が重い。原作ほどでないにせよ、かなりの怒りが感じられる姿で雷十太戦に向かう剣心ですが――おっ、と思わされたのは、ここで戦いを見守るのが、左之助・薫・弥彦に加えて、由太郎である点でしょう。
原作では直接戦いを見ていない(病院にいた)由太郎ですが、ここで一度は師と仰いだ雷十太の姿を見ることは、これはこれで残酷ではあるものの、大きな意味があるといえるでしょう。
そして雷十太戦は――今回のアニメ版らしい動きの良さで飯綱連打を放つ雷十太と、それを超機動で躱す剣心の攻防がなかなか見応えがありましたが、注目すべきは決まり手であります。同じ飛天御剣流・飛龍閃ではあるものの、原作では柄頭の一撃一発でKOだったのが、アニメ版ではそこから追い打ちで(刀を鞘に納めながらの)一撃、さらに龍槌閃チックに鐺でもう一撃と、強敵に相応しいフィニッシュぶり(単に容赦がなかっただけかもしれない)。その後の弥彦を人質にとって逆に弥彦に煽られるという最高に格好悪い雷十太のムーブは変わらないものの、元祖うぐぅを晒して廃人になることもなく、まずはマシな結末であったといえるでしょう。
(Aパートで始末されたのはさておき)
しかしこの回の真の見所はこの先にあります。右腕の傷を癒やすために世界で一番医学が進んだ独逸(まあ、ポーラールートとかあるし……)に向かうことになった由太郎の傷ついた心に、弥彦の手厳しい叱咤激励が火をつける――という原作通りの展開もいいのですが、驚かされたのはその次――剣心と薫の会話の話題の中心となったのはなんと雷十太だったのであります。
「剣の才能は確かだった。だがなまじ才能があったから、剣の本質を問うことなく、ただただ技だけを追い求めてしまった」とまでここで剣心に言わしめる雷十太。確かにガード不能の飛び道具を連打するのは、(この後も含めて)本作の誰もがなしえなかった偉業ではありますが、そこで留まってしまい、剣とは、剣術とは何かを考えることをしなかった。おそらくは雷十太にとっては、それを考えること自体が道場剣法の惰弱さに繋がるものと見做したのだと思いますが――だからこそ彼は徒に攻撃性に流れ、頻りに殺人剣を称揚することになったのでしょう。そんなことに拘らなければ、本当に新しい剣術を明治の世に根付かせることができたかもしれないのに……
そして剣心は語ります。「人を殺めなかった、その一線を越えなかったことが救いなのだと、あの男が気付けばよいのだが」と。雷十太の虚勢を決定的に暴くことになった、人を斬っていないという事実が、このような形で彼にとっての救いとして語られるとは――脱帽であります。
しかし本作は実はこれだけで終わりません。Cパート――おそらくは雷十太が敗れ、剣心たちが立ち去ったその後、雷十太は人斬りという経験を積むため、もう誰でもいいと路傍の地蔵に祈る娘と老婆に血走った目を向けるのですが――まさかここで経験を積んでしまうのか!? とちょっぴり不安になったところで、彼の刃が断ったモノは……
その皮肉な、しかし何とも示唆的なモノの前に膝を屈し、身も世もない泣き声をあげる雷十太。それは一人の剣客の心が折れた末の絶望ではなく、新たな剣客の産声だったと思いたいものです。
というわけで、雷十太を雷十太として描きつつ、しかしそのキャラクターを救ってみせるという離れ業を見せてくれた今回。やがては真の剣客となった彼が北の大地に姿を現す――かどうかは知りませんが、ある種の希望を見せてくれたことは間違いありません。
そして次回、雷十太に並ぶオーバースペックを持つ男が……
(しかし原作にある台詞なのですが、いま左之助が「真打登場」というと、どうにもおかしい)
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